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久遠さんが目覚めた当初。
彼女はあらんかぎりの怪我した子猫さんぐらいに警戒してきた。
危害を加えないといってあれこれ言葉をつくしてどうにか納得してくれたけどさ。
いや、大変だったね。
「さて、では久遠さん。
怪我の治療をしようではないか。
そのままだと化膿してしまうかもしれない。
化膿した傷というのは見た目的にもけっこうグロテスクな物がある。
背中の傷は僕がやろう。
だから服を脱いではくれ。
何、女どうしだ恥ずかがる必要もなかろう?
ふふ、ありがとう。
じゃあ早速。
痛むかもしれないが多少は我慢してくれ」
「……助かるわ。
でも、霞ヶ丘さんなんで私を助けるの。
この学校には噂を信じている馬鹿ばっかりなのに」
「もう、本当に疑り深いなぁ!!
僕は噂なんか信じないよ。
それに久遠さん。
意外と信じてる人も居るかもしれない。
それに全員が同じとは限らない。
偏見はよくないよ。
それに、久遠さんはやってないんだろう?」
「当たり前よ!」
「そう、ならいいじゃないか。
他の誰に信じてもらえなくても自分がやってないと言うならばそれを信じれば良い。
それで十分だろう?
真実を自分で解っていれば心は折れる事はないよ。
いつか、解ってくれる人もできよう」
「……貴方みたいに?」
「僕は見たものしか信じない。
だから、今はなんとも言えないけれど
真実が解ったら僕は正しい方の見方になるさ。
約束する。
僕はこう見えても約束は守るほうさ。
自分で言った言葉は自分で責任をとらなきゃ駄目だろう?
……はい、出来たよ!
ふふ、それにしても久遠さん、肌が白いね。
思わず嫉妬してしまうよ」
「貴方だって白いじゃない」
「僕は引きこもりだからね!」
「威張って言う事じゃない」
辛辣な突っ込みだ。
ふふ、久遠さんは突っ込み属性なのかな?
久遠さんと仲良し大作戦は無事に成功したみたいだね。
考えれば僕って凄くないか?
だって椎名さんとも久遠さんとも仲いいなんてなんたる矛盾を抱えているようなんだろう!
あくまで他人から見ればなんだけれど。
僕から見れば全然矛盾なんてしてないと思っているけどね。
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