07
「『歩く混沌』の名にかけて、この問題をどうにかしてやろうじゃないか。
ふふ、これは僕の二つ名でね。君達とは大分ちがう呼び方をされているがね。
直訳だと『何もない全て』になるのかな。
オールオアナッシングともかけているみたいだけれど、これをつけたのは僕の愛すべき友人なんだ。
この歪み具合が『歩く混沌』の読みに丁度いいらしい。
他にもたくさんの呼ばれ方をしているけれどそうだな、有名所をあげるとしたら。
『矛盾包容』『不思議世界』あたりだろう。
どれも僕の別称だけれどなんとも素敵な蔑称だと思わないかい?
こんな禍々しい名前は僕には大仰だけれど、そんな名前を貰えるだけの実力は持っているつもりだ。
だから君も復讐の肩代わりなんてしようと思わないでくれよ?
僕みたいな者に忠告を受けなくてもスー君ぐらい聡明な人だったら必要がないのかもしれないが、一応ね。
それに久遠さんみたいな優しい方がスー君が暴力を振るう所なんてみたくないだろう?」
「へ?うん、暴力はやだよ。痛いし……」
「だそうだよ、スー君」
「はぁ……本当に恵は人がいいよな。
大丈夫。そんな事にはさせねーよ。
でもいいのか?
霞ヶ丘とは今あったばかりなのに巻き込んで」
「自ら首を突っ込もうとしているから巻き込まれるとは言わないよ。
それに旅は道ずれとも言うしね。
ああ、でもこれは言っとくけれど僕は公平を期す為に中立の立場をとらせてもらうね。
久遠さんもいじめにそれなりの理由があるかもしれないし喧嘩両成敗だ。
そうでもしないと、正しく事を処理できないからね。
承諾してくれるかな?」
「ああ」
「ありがとう、霞ヶ丘さん」
「ふふふふ、いえいえ。お礼なんていらないさ!」
授業が終わってしまうよ、と言い二人を追い出す。
なかなかの成果だったな。彼女と知り合えたのは大きい。
しかも好感を得れたのは。
それに神の子の危惧していた暴力沙汰もこれである程度は押さえる事ができるしね。
昼休みに参謀を生徒会室に放送で呼び出す。
彼は生徒会の子だからおかしくない。
機械をとおして解りにくくなっているといえ彼なら僕だとわかるだろう。
そして神の子も。
彼が僕の意を組んで詐欺師に紳士をつれて生徒会室に来た時は感動したよ。
以心伝心と言うかね。
それからスー君の話をして詐欺師と共に学校中に隠しカメラをしかける事になった。
彼なら見つからないように、かつベストポジションを見つけ出してくれるだろう。
なんたって彼は悪戯のエキスパートでもあるのだからね!
「それでこれからいったいどうする気だい?」
「神の子の心配には及ばないさ。
まずは真実を見極めてからみんなにちょっとずつヒントをあげて真実に気づかせるようにするつもりだよ」
「頼りにしてるよ、斎」
「まかせてくれたまえ、愛してる君の為に頑張るさ」
「……あの、すいません。
幸村君と霞ヶ丘さんの関係が掴めないのですが」
「関係か。
一言で言うにはとても難しいかな。
僕には神の子が必要だし、神の子は僕にべた惚れなのさ」
「べた惚れ言うなよ。
気持ち悪いな。
お前が言うと俺が変質者に聞こえる」
「精市は霞ヶ丘と恋仲なのか?」
「そうだとも言えるし違うとも言えるよ」
「俺達は恋人じゃないからねしね」
「意味解らんぜよ。霞ヶ丘は幸村の事をどうおもってるんじゃ」
「好きにきまってるじゃないか。もちろんLOVE的意味でね」
「愛してるんか」
「ラブラブさ!」
「で、恋仲ではないと」
「そのとうりだよ」
「まぁ、深くはつっこまないでよ。
その内に恋仲にさせるつもりだから」
「させるつもりって……」
「ふふふふふふふ」
僕と神の子の笑い声が見事にそろって皆の笑顔が引きつった。
まったく、ひどいじゃないか!
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