01


ふわふわとした感覚。あたたかい。しかし体を揺さぶられて覚醒を促されていて。
もう少しこのままでいたい。むずかるようにうう、と声を漏らす。

「舞!起きろって」

親友の声。

「次移動教室だろ。昼休みだからってそろそろ準備しないと」

ああ、もう昼休みがおわ……え?
ちょっと待て。この声、は。
一気に覚醒した意識。がバリと顔を上げると眼を丸くした親友の姿。

「舞ちゃんが学校で寝るなんて珍しいですね」

手が伸びてきて、額にあてられる。

「熱はないみたいですね」
「……え?なんでみんな、が」
「寝ぼけていらしゃるのですか?そんな舞ちゃんも大変かわいらしいです」
「今すぐ舞から離れなさい百合予備軍」
「何言っている私たちはただ可愛いものを愛でてるだけだ!」

テンポよく繰り広げられる会話は間違いなく彼女達だ。
そしてよくよく見ると制服を着ている。これは高校時代の。最も平和で最も大切だった、時の。
これは夢だろうか。しかしこのリアリティ。夢と思えない。
でも私たちは大学生だったわけで。何が何だかわからない。

「騒いでないで行くわよ」

はーい、と元気よく答える声に私もあわてて反射的に机の中に手を伸ばす。
そうだ次は科学の実験だ。あれ、なんでわかるんだ。
はたと止まる私にみんながいぶかしげに内心、首をかしげた。
廊下に出るとまた気ままな会話がスタートした。

「そういえば昨日見たサイトでめっちゃ面白い話を見つけたんだ」
「また夢小説の話?」
「ジャンルは何ですか?」
「テニプリ。後でアド教える」
「楽しみにしています!」

テニプリ。テニスの王子様。そうだ、私はそこで。
そうだ。なのになんで私はここに。やっぱりこれは夢?それとも今までのが全部……?
おまけにここ最近息苦しさが消えてる。こちらのほうが居心地がいい。
そう伝えるように。そうだ、私は本来こちらの人間。
むこうの方にいたのが可笑しいのだ。と、ふいに後ろから誰かの声が。

「舞?さっきからぼうとして本当に大丈夫か?」
「ちが、今誰か私の名前を呼んだ気がして」
「廊下には今だれもいませんよ?」

振り返ると確かに誰もいない。空耳だろうか。ああ、また。さっきより大きい。
誰だ。男の声。わかるはずなのに、わからない。なんで。

「……行かなきゃ」

だた、なんとなく思った。声が導くままに。

「行くって、どこにですか?」
「どこって」

私も聞きたい。
やっぱりこれは夢だ。夢なんだ。だって私は死んで。
私の呼ぶ声がどんどん大きくなる。頭が、割れそうだ。

「  」

誰か、どうにかして。



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