01


氷帝の隣は立海だったから一連の流れを見ていたのだろう。
ハルの声を聞いて、私は遠くなった意識を無理矢理取り戻す。
心配はかけたくない。
跡部さんは眉間に皺をよせて私の握られた手を見つめる。

「血、でるぞ」

ハルに聞こえないぐらいの声で告げるのに、ゆっくりかぶりをふる。
血ぐらい平気だ。
こんな空気に比べれば。
近づいてきたハルが私を抱き寄せた。
その表情は険しい。
……ちょっと悪いけど、体重を預けさせてもらった。

「とにかく、喧嘩はやめて下さい。スポーツしているんですから体を大切にしなくてどうするんです?
 向日さんにやりすぎた事は謝りますから」
「舞が謝ることなんかねぇだろ」
「そうじゃ。悪い事なんてしてなか」
「二人は黙って下さい。話がややこしくなります。とにかく、皆さん、いいですか」
「納得いかねーよ。仲間が傷つけられて。女と言え、黙ってらんねー」
「すいません。けれど、仲間同士が傷つけあうのもどうかと思いますよ」

悪い人じゃないのだ、みんな。
だけどもう少し考えて欲しい。
誰が誰に惚れようが、どうでもいいけれど。

「私のことを嫌おうが、なんだろうが、好きにしてください。
 けれど仲間の内で喧嘩はやめて欲しいです。
 せっかく出会えた、人達なんですから」

私はこの世界で立海のみんなに出会えた事を本当に本当に感謝している。
それは私自身の問題もあったし、前世の記憶もあったから強く感じること。
けれど、それは私だけじゃないのだ。
問題はなくとも。
前世の記憶がなくとも。
出会えたその奇跡は誰だって感謝すべきなんだ。

「お願いですから、仲間を大切にして下さい。
 大切な物を無くす事なんて簡単なんですから」

ハルが、抱きしめる力を少し強くした。

「他の大切に気を取られて、見失わないで、下さい。お願いします」

谷岡さんの恋を否定はしない。
けれど他にも大切な物もあるはずなんだ。
両立は難しいのはわかるけれどそれでも、共に戦ってきたその絆を捨てないで欲しい。
私の言葉に、みんなが黙り込む。
これでこの件は一旦落着ってことになっただろう。

「……全員、頭を冷やして来い。外周、十周。行って来い」

跡部さんの声に全員が走り出した。

「舞、ちょっときんしゃい」

それと同時にハルに引っ張られて、建物の中へ。
立海のコートを見ると、みんなこっちを見ていた。



戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -