03


「謙也さん、座って下さい。みなさんも落ち着いてますか?はい、結構です。一回、仕切り直しましょう」

謙也さんが荒々しくもとの席に座ったのを見てから、全体を見渡す。
私が演説じみた事してもいいけれどそれを言ったら考えに押し付けに過ぎない。
偽っている事を指摘して正義ぶるつもりはない。
正義なんて嫌いだ。
正義はいつだって強引で独りよがりなものだから。

「まず、谷岡さんのしん……じゃない。谷岡さんが好きな人達。
 今どう思ってますか。はい、大石さん」

大石さん指名は一番穏やかさんだからだ。

「騙された……と思う気持ちもある。けど見抜けなかった俺達も俺達だ。自分の未熟さがなさけないよ」

おお、さすが。副部長なだけあってなかなか理想的な答えをしてくれる。

「そうですか。では乾さん。柳先輩が言ってた意味、今ならもうわかりますよね?」
「……蓮二に、愛里は悪影響だと言われた。俺は当然のように突っぱねた。盲目だった」

わからない人の為に説明してくれる乾さんが偉い。
そこに痺れる。憧れる。
いや、言いたかっただけだ。
緊張感とか皆無だな、私。いつもの事だけど。

「実力が衰えても疑問にも思わなかったのは俺達の責任だ。それで彼女を責めてはいけないと思う」

乾さんが忍足さん、それに今にも噛み付きそうな人に視線をやる。
なんというか人選的に誘導してるみたいでやだなぁ……。
でもそうしないと話が進まないし。
悩む所だ。

「谷岡さん。私は谷岡さんを責めるつもりはない。そういう性格の人だって受入れる。
 首を占められて殺されかかるのはもう遠慮願いたいけど。
 でも谷岡さん。谷岡さんにも直さないといけない所があるとは思うよ。それを自覚して欲しい。
 自覚するのも直すのも大変な事。
 だから、それを手伝うのが私達で、仲間……特に青学の人達の役目なんじゃないかな」

谷岡さんは黙ったままだった。
これ以上言葉を重ねてもしかない。
私は今日は疲れた。話しすぎて喉が痛い。
そもそも私は口数が多い方ではないのだ。

「私達も強引な所はあったと思う。だから、それぞれが悪かったって事にしましょう」

解散の一言はやっぱりキングにお願いした。
この人にやってもらうと締まりが違うから。
さて部屋に戻るか。



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