02
「私はみんなに愛さる存在なの!それが当然だって、言われてきた!
みんなに愛されるのは私!この世界で一番可愛いのも私よ!」
好かれたい、愛されたい。
誰だってある要求だ。
けれどそこまで貪欲になる理由ってなにかなと考えたことがある。
すると、やっぱり満たされたことがなかったのだろうなって、思った。
私はこんなのだけれどなんだかんだで、おせっかいでやさしいみんながいた。
だから私は生きていけた。
それが恐ろしい反面、救いでもあるのだ。
谷岡さんが満たされない理由はなんなのだろう。
ぜえぜえと息を吐く谷岡さん。
指摘しようか悩んだけど、その前に忍足謙也さんが彼女の胸ぐらをつかんだ。
流石スピードスター。
足もさることながら、沸点も低いなー。
というか怒るのは筋違いだと思う。
騙されて怒るのはわかるけど、騙される方が悪いって私は思う。
私の思考回路は悪者サイドっぽいのは否めないけど。
「お前、今まで騙してたんか!」
「騙してないよ。だって、私がみんなが好きなのは本当だもん」
きょとりと首を傾げる谷岡さん。
このタイプはあれだもんな。
うん、あれ。間違ってるとか絶対に考えないタイプ。
「忍足さん、そう怒らずに」
忍足さんの腕を軽く掴むと、睨まれた。
「お前は騙されて、被害にあって怒らんのか!」
「いえ。別に怒っても憎んでもないですよ」
「とんだ聖人君子やな。俺には考えられんわ」
聖人君子か。笑ってしまう。いや、表情はかわってないだろうけれど。
私は聖人君子から程遠い欲まみれの人間だ。それを悪いと思わない。
「まあ、どうでもいいですけど」
「え?」
「なんでもありませんよ。でも暴力は駄目です」
じっと見つめたら渋々はなしてくれた。
忍足さんみたいな人には私のような性格が苦手だから、見つめられて戸惑って冷静になっただけだろうが。
他にも戸惑いや怒りみたいな色を出している人もいるが比較的おちついてる。
さっきの話し合いの効果もあるだろう。
遅かれ、早かれ似たような事がおきた。
そういう意味ではいいタイミングだ。
「弦兄、ハル。みんな」
立海のみんなを見る。
色々際どい発言もあった。
突拍子もない事だから、ありえないと無意識のうちに拒絶してる人もいると思う。
「信じて」
何をとは言わない。
たぶん全部だ。
なかなか信じられない私をみんなは受入れてくれるから。
そして、みんなにはそれで十分だった。
好きにしろといわんばかりの態度に、今度こそ笑った。
本当に、小さな笑い方だっただろうけど。
愛されてるなと感じる。
それが力となるのだ。
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