04


たぶん、ずっと手を握ってくれていたのだ。
ずっと、呼びかけてくれていたのだ。
暖かくて、優しくて、けれど、とっても悲しい気分にさせられた。
声の主は、ハル。
目覚めた私を見て心底ほっとした表情をしていて。
ああ、そういえば私谷岡さんに殺されかかってたんだっけ。

「目覚めんような気がしたん」
「なんで……」
「直感的。谷岡を追いつめようとしてたのが裏目に出たようじゃな、すまん」
「……?どういう事?」
「仕事とか多めに押し付けて、慣れてないから絶対にボロが出ると思ってな。
 それを口実に追い出してやろうと思ったん。アイツは災いにしからなん」
「最近、谷岡さんにみんなが構っていたのはそういう理由だったんだ。
 なんだ……私が、不要になったわけじゃなかったんだ」
「ありえん!」

私の溜め息にハルが眉を潜めた。
でもそう思ってしまったのだ、仕方無い。
今だからなんとなくわかる。
あの夢はたぶん生死の狭間みたいなのを有る意味彷徨っていたのだ。
呼吸のしずらさも、痛みも。
私は元々この世界にはいなかった人間だ。だからこそ、受入れられなければ弾かれる。
無理矢理、魂みたいなものを体から引き離そうとしているからの痛みだったのだ。

「舞。いい加減その性格どうにかならんの?
 こんなに大切にされて、それでも足りないんか?」
「そんなこと。嬉しいよ。勿体ないぐらい」
「ほらそういう」

デコピンされた。
地味に痛い。
だって、仕方無いじゃないか。
今さら生き方なんて変えられない。

「少しは自信を持ちんしゃい」
「……努力する。それでみんなは?」
「谷岡のしでかした事を報告中。たぶん全員また集まってるぜよ」
「ハルは、見てたの?」
「俺達全員な。もうそん時は気絶しとったけど」

ハルの言う俺達は立海のメンバーの事だろう。
昔から人を懐に入れない人だ。
たとえ知り合いで仲良くしてようが、立海のみんな以外を「俺達」なんてくくりにしない。

「みんなの所に行きたい」
「ん。みんなも安心するじゃろ。歩けるか?」
「問題ないよ」

それでも心配なのか手を握ったままみんなの下へ。
扉をあける前に、谷岡さんの声がする。
何不用意な事いってるのさ。
突飛な事だから「答え」に辿りつく人なんていないけれど。
それにわかっていても聞きたくない。
ハルの事はなるべく見ないふりをして、扉を開いた。

もう、この一連の事も終わりにしてしまおう。



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