02


side 幸村

谷岡さんの怒り具合からきっと誰かに八つ当たりする。
それは渡瀬さんか舞。
なんとなく嫌な予感がして。

ここ最近の舞の体調不良。
時々、息苦しそうにしていた。
上手く隠してるみたいだけど俺にはわかる。
病気に人一倍臆病な俺には。
最初はよくないものかと不安になった。
でもあれは精神的なものだ。自分の事を追いつめるのは舞の悪いくせ。
とりあえず手が出る前にと思ってみんなを連れて舞を追いかけた。

そして、そこには信じられない光景が。
谷岡さんが舞の上にまたがって首をしめていて。
一瞬固まった俺の横を銀が駆け抜ける。
ああ、やっぱり一番に動くのは仁王だ。

谷岡さんを仁王が押し飛ばす。怒ってる。それも相当。
かくいう俺も許せるものではないし、怒ってるけれど。

「お前!何してんのかわかっとるんか!!」

怒鳴る仁王。けれど仁王の言葉に反応はなく、なぜか放心している。
唖然としてる、が正しいか。
なんで、とか、なんで知ってるのか、とか。何やらぶつぶつ呟いている。
俺たちの事なんて意識の外だ。

「息はある。気絶しているだけだ」

舞の安否を確認していた柳が生理的なものだろう、滲んでいた涙をそっとぬぐいながら報告する。

「谷岡!」

弦一郎が叫んで、谷岡さんの頬を思いっきり殴る。
平手なのがわずかに残っていた理性の証しだろ。
舞の性格上過保護気味になってようやく人並みの手助けをしてあげられる。
だから口には出さないけれどけっこう俺達は舞を気にかけている。
仲間だから、当然だ。
いつまでたっても自分自身に自信がない舞が不安がらないように。
そして、恋人である仁王はもちろん兄のこいつはことさら。
目の前でおきた誘拐事件の事は舞本人から聞いている。
あんな事があれば誰だってそうだろう。
だからこそ弦一郎が殴った。今にも殺しそうな仁王の代わりに。

「ねえ、谷岡さん」

ようやく我に返った彼女は青ざめて俺を見上げる。
そんな顔したって許してあげないんだから。

「私」
「言い訳はいらない。君がやろうとしたのは殺人未遂。犯罪だよ」

びくりと肩を震わせた。

「解散したばっかりだけど」

もう一度集まってもらう必要があるみたいだ。



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