04
話し合いの後、自然解散という形になった後。
彼らを避けるように一人廊下を歩いていたらいきなり、壁に叩き付けられた。
息が一瞬止まる。
気配に全く気付けなかった。私の注意力の散漫さを呪う。
その隙に首を占められる。
気管を占められる不快感に眉を寄せながら相手を睨む。
怒りに震えた、谷岡さんだった。
「あんたのせいで恥をかいたじゃない!
それにああやってみんなを私から奪おうとしているわけ!?
私の邪魔をしないでよ!」
締め付ける手をどけようと腕を掴んだがどこにそんな力があるのだろう。
かなりの力で、窒息ぎみの私には敵いそうにない。
生理的な涙で視界が歪む。
「調子のってるから、こういうめに会うのよ。さっきので私に買ったつもりなの?残念ね!
ねぇ、今どんな気持ち?」
最悪だよ、こんちくしょうめ。
意識がチカチカする。
足を思いっきり踏んづけて痛みで力が緩んだ所で谷岡さんを引き離す。
勢いで倒れて、急に戻ってきた酸素にむせた。
だから今度は押し倒され、床で再び締め付けられた。
さっきより悪いじゃないか。
体重をかけられるから、本当に殺される。
一度目はトラックに引かれ。
二度目は窒息死かー。
私の人生ってどちらにしろ、こういう終わりなのかな。
「あんたなんて、この世界にはいらないのよ!」
この合宿内で感じていた胸の痛み。今、一番、痛かった。
痛くて、痛くて、八つ当たりみたいに口を開いた。
「あな……た、だって、……んなじ」
掠れた、音。
「違う……世界、の、人じゃない」
見開かれた目。
もう声はでないが、通じるだろう。
『テニスの王子様』
そう言って、唇を歪まして嗤った。
違う世界の私がいらない人間なら同じ世界からきた貴方とどう違うの?
ああ、弦兄。
誘拐されたあげく先に死んじゃってゴメン。
お父さんもお母さんも、ありがと。
立海のみんなも。
そして、ハル。
こんな無愛想でいきなり現れた私を受入れて、愛してくれてありがとう。
意識は、そこで暗転。
最後に見えたのは綺麗な銀だった。
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