03


「仕事に対する認識の甘さは先程の部長会で言いましたから、ここでは言いません。
 でも、それを容認するのもどうかと思うんです。
 応援するだけなら誰だってできるんですよ。そこらへんのミーハーだってできます。
 マネは選手の事を考えて、マネだからこそできるアドバイスをします。
 逆に選手だってマネによりよい環境作りの為に、改善して欲しい所を言うべき。
 何か間違ってますか?ねえ、海堂君」
「……応援が励ましになる事だってあるだろうが」
「そういう場面もありますよ。でも、その応援の声でそちらに気をとられてどうするんですか。
 かっこよさをアピールする為に技を鍛えたのですか。違いますよね。相手を倒すため、です。
 なのに不必要に技を繰り出したり、谷岡さんに声をかけたり。集中して下さい。
 そう、貴方達は谷岡さんに気をとられて練習を、試合を疎かにする。
 不用意に応援をする谷岡さんもどうかとは思いますが、谷岡さんだけに非はないです。
 これは貴方達の責任です」

さて、どれだけこの言葉が彼らの耳に届くのやら。

「谷岡さんを大事に思うのはいいんです。
 けれど仲間もそうであれみたいな考え方はそれは傲慢ですよ。これはどちら側にも言ってますからね?
 それと練習を疎かにするから、他のメンバーが嫌がるって事を理解は欲して下さい。
 練習中に愛里、愛里……と。テニスの事を考えて下さい。貴方がたは谷岡さん依存症ですか。
 だからその谷岡さんも嫌いになってくる。とんだとばっちりですよ、谷岡さんも」

別に嫌われる事はなれてるからいいんだけれど。
わざわざ嫌われるであろう事を言わなければいけないのは面倒だ。
息が、しにくい、なぁ……。

「手塚さんがなぜ立海にいるか、わかります?それを気付いて欲しかったんですよ。
 ……各自、考えておいて下さい。
 何故、こういう状況になったのか。本当に今のままでいいのか。
 冷静に。客観的に、思いかえせば答えは出るでしょう?」

いつから歪みができたのだろう。
彼らの絆は永遠だと私は信じていた。
困難を間近で見て、一緒に乗り越えてきた立海を見てそう、確信していた。
形は違えど、同じような経験を重ねてきた他の学校もそうだろうと漠然と思っていた。
何故だろう。
谷岡さんという異物のせい?
……一番最初に、この世界を歪にしたのはこの私ではないか。
私という異分子がいるから、渡瀬さんや谷岡さんみたいな人も内包してしまったのではないか。

「忘れないで下さい。今まで支えてきてくれたのは何なのか」

私がこの世界を壊しているのではないか。
確信はなく、あり得ない話でもない。

「このような話し合いをしてしまった事を……」

声が途切れた事に不審に思った白石さんが心配そうに眉を下げながら私の名前を呼んだ。
なんでもない、と首を横にふり、深く息を吸い込む。

「恥ずかしいと思って欲しいです」

テニス合宿でこのような時間をとる事は本来ありえてはならない。
私がどうにかしないといけないのだ。



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