04
手塚さんに話かけたのは、まあ、困ってるだろうなといのが一つ。
あとは私とみんなの認識のズレの修正が一つだ。
みんなはいったい谷岡さんをどうしたいのだろう。
「手塚さんは、みんなをどうしたいんですか?」
「それは」
難しい顔をして黙る手塚さん。
みんなの意志を尊重して、と思う気持ちと部長として、そして仲間としての思いと。
悩んでいるのだろう。
「谷岡さんを追い出して欲しいんですか?みんなに谷岡さんの本性を知って欲しいんですか。
知って、彼女の立場を苦しくして?みんなに以前のように練習に戻って欲しい?
一応、今までは練習するように促していましたが実際の所、皆さんの意志がわからなくて困ってるんですよ」
「……その言い方、お前はどちら味方かわからないな」
「私は小春さん曰く騎士らしいです。だから、私は王。立海の為にしか動かない。それは事実です。
だから私はどちらの味方でもないですよ。本音としては。でも、約束はしました。だから手助けはしますよ。
彼女をかばうような発言は、ただ事実を述べているだけです」
争うとした時点で、何かを失い、何かを奪う。戦争始めた瞬間、両方が悪で正義なんてないのだ。
あるのは、ただお互いの信念だけ。
「俺は、谷岡が来て、マネージャーになった事を酷く後悔している」
初めからわかっていた手塚さんからしてみれば、結果は予測できていた事だろう。
「あれでいいと俺は思わない。部長として、怠慢を許すわけにはいかない。
だから、俺は谷岡に、マネージャーとしての自覚を持って欲しい。
そして部員達も。谷岡の本性を知る事が大切じゃない。ただ、あの頃に戻れたら」
本当にこの人はお人好しだなぁ……。止めさせて欲しいなんて思ってしまえば、楽なのに。
部長としての権限とか、周りの、そうスミレちゃん、だったか?
あの人に直談判すればできた事なのに。あの人は女傑だろうし、騙されなささそうだ。
「貴方は本当に根っこから青学の部長なんですね」
「当然だ。立海は違うのか」
「……どうでしょう。最近のみんなの動きはよくわかないんです」
嫌ってるくせにどんどん仕事を任せるとか、何をしたいのだろう。
私に遠慮している?それなら渡瀬先輩がいるのに。
「ちょっと恐いんですよ。みんなの意見を聞くのが」
もし私の事を役立たずだと思われいたら。そう思うだけで今立っているだけでもやっとで。
実際、事態はあまり進展していないのだから。
いや。その為にも。
「手塚さん。お願いが、あるんです」
「……なんだ」
「部長会議を、開いて下さい。貴方の呼びかけで」
「開いてどうする」
纏まりのない団体の中で個人で当たっていくだけ、なんて悠長な事は言ってられない。
もっと他に作戦を、たてていかないと。
「その場に、マネージャー全員の参加を要求します」
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