04
とりあえず、正面衝突を避けてもらったがいいが谷岡さん信者に睨まれるようになった。
トレーナーもこれで潮時かもしれない。
全体を回ったほうが把握しやすいのだが、仕方無い。
動き回らない方がいいのかも。
それに言っても反発している人に指示しても意味ない。
トレーナーとして一応の勉強はしたが最終的にそれでいいと判断を下すのは部長なのは知っているはずなのに。
マネとしての動きは渡瀬さんが間を取り持ってくれるから直接あわなくても平気。
跡部さんに頼もう。メニュー作りはする。一回請け負ったから。でも表立ってはやめよう。
普通にこれからは立海のみんなの中にいた方が楽だ。
「……ッ!」
ズキリと胸あたりが痛む。鋭い針でさされたかのような。
なんだ、この痛みは。
締め付けられる。呼吸がしずらい。
身体と、心が引き裂かれる、よう、な……?
この感覚を、私は知っているような気がする。
なんだ、思い出せ。
記憶力が曖昧になる年でもないでしょう!?
壁にもたれかかる。
と。廊下の曲がり角に人が。
「お願い、できるかな」
柔和な声。表情。
「はぁい!全然平気ですよ」
甘ったるい、声。
精市先輩、と口だけ動いた。
なんで谷岡さんと?
そして仕事を頼んでいる。
谷岡さんに、やって欲しいと。
どうして、なんで。
「……う、あ……。いたっ、ぁ……」
涙がでるんじゃないかって程の痛みにしゃがみ込みそうになる。
だが、こっちに来る先輩に、すべてを無視して、逃げ去った。
大丈夫。
私自身の痛みなんて関係ないでしょう?
そう、言ってよ。
……ハル。
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