03
「私が憎い?」
心配そうに駆け寄ろうとする白石さんを止めて、谷岡さんに近づく。
「だって、貞治にあんな事を!」
「そう。憎いの。だったらどうする?……殺す?」
谷岡さんの手を取って私の胸、心臓の上におく。
「例えば、そう。ここを貫ぬいてみる?そうすれば邪魔者は消える。後は貴方の思うとおりの世界だね」
「こ、ろす、なんて」
「ねぇ、死の定義ってなんだと思う?息をしてない事?心臓が止まってる事?体温が無くなる事?
でもね、それは即物的な死だよ。精神的な死もある。それは」
手を放して今度は谷岡さんの口にふれる。
「ここから、作れる」
方法なんてたくさんあるけれど、その内の一つだとは言える。
まぁ、生命活動をこなしているだけでは生きているとは言えないということだ。
「だから言葉に責任を持たなきゃいけないんだよ。谷岡さんにその覚悟はあるの?」
「舞、ちゃんこそ、あったから、貞治を……」
「好きに解釈していいよ。信じるか否かは自分できめないと、だよ」
結果は見えているけど。だから何も言う気はない。
別に私個人がやられるのは気にしない。仲間内の喧嘩よりマシだ。
ただ、全体が二分割するのは得策じゃない、か。
そこは乾さんにまかせよう。
少し離れていた所で練習していたから、駆けつけるのは遅くなってしまったみたいだ。
そこを咎めるつもりはないが。
後ろを向いて歩きだす。
乾さんの背を軽く叩いてすれ違う。
「悪い舞」
「いえいえー、お仲間さんは宜しく」
「上手くいっておくよ」
「期待しておきます」
と、この間三秒だ。
直接的なものは避けて下さいよ、お願いだから。
この肩を叩く仕草も彼らにとっては嫌だろうが……。
それより親しくしはじめた人を優先する。
四天の人達に平気だと軽く手をあげるのも忘れずに。
さぁーて、立海いくか。
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