03


でもな。
私の見えるものって言われても。
谷岡さんは二重人格ですよ?
いや、これは語弊があるか。
裏表が激しいです。
うーん……。
ある意味どっちも同じだ。
というかこれを私が言っても仕方無いというか。
谷岡さんも別に騙してはないし。
あれが素だと思う。
愛されて当然な「私」であり続けるんだから。
人の二面性なんて誰でもあるから責める事でもないし。
それに、私の見ている事なんていつもたった一つだ。

「私は『身内』が幸せになる事しか見てませんよ。
 乾さんも同じじゃないんですか?
 そして、それでいんです」

普通は自分自身の幸せになる事を望んでそれだけを見る。
私の事はまぁ、置いておいてだ。
けれど周りの幸せを望むのだって偽善であるはずがない。
そんな悲しい事は違うって私は教わったから。

「乾さんは蓮二先輩と一緒に幸せになりたいんですよね?
 ならそのまま進めば平気ですよ。
 谷岡さんと蓮二先輩、私達は全然逆です。
 両方信じるのは難しいでしょうけれど」
「それだと、青学のみんなと決別してしまうかもしれないじゃないか」

両方取るのは難しい。
二兎を追う者は一兎をも得ずなんてよく言ったものだ。
欲張ってはいけないというか。
けれどそれは両方、反対側に行った場合だと思う。

「天秤の中央は必ず存在しますよ」

谷岡さんみたいな人の捕まって欲しくないとか思っているのだろう。
たぶんそんな事をみんなは思っている。
谷岡さんへの思いも私は否定したくない。
例えば、練習を疎かにしない事。
谷岡さんに夢中になりすぎない事。
今はこんな扱いされているけれど谷岡さんだって「欠点」の固まりでもない。
「テニプリ」のイケメンとか思ってたりするけれど。
みんなを好きな気持ちは確かに本物なのだから。
色々、足りないけど。
気持ちに技術がなさすぎだけど。
それをどうにかフォローして育ててあげるのも君達の責任じゃないだろうか。

「ほら、まだ、若いんだし、悩みなさい」

望むなら手伝ってあげる。
たくさん悩んで、たくさん話あって、それでお互いの納得する方法を見つけて欲しい。
誰一人、欠ける事なく。
追い出すのは……本当はあまりしたくない。
渡瀬先輩は、立海は合わなくてそこでは上手くいかなかったから。
けれど氷帝行って、上手くいったら、私達とも上手くいってる。

「なんだか、ずっと舞が年上みたいな言い方だ」
「実は私、年齢詐欺しているんです」
「それは……笑えないな」

少しは笑って欲しかった。
笑えないといか本当なんだけどさぁ……。



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