03


泣くという行為は案外、体力を使うのだ。
泣きつかれて寝てしまって。
何時間たったのかわからないけれど、意識が浮上。
ゆるゆると目を開けるとハルの顔面度アップが。
思わず叫びそうになったのをどうにかこらえる。
ハルに未だ、抱きしめられたまま、恐らくハルのベットの中いる。
貞操とかさすがに心配はしてませんけど、なぜ抱きしめたまま。
何故。
なんで!?

ハルも寝ていて、付き合わせてしまったなと思う。
申し訳ない限りだ。
ハルの綺麗な顔をこんなドアップで眺めるのは始めてかも。
何度見ても白くて綺麗な肌。長い睫毛。
ハルは中性的だからな。
本気で女装すればそう見えそう。
しかしあんまり容姿に頓着ない私でもさすがに羨ましい。
じぃと見ていたせいか、ハルも意識が浮上したらしい。
ゆっくり目を開けて、私と視線がかち合う。

「おはようさん。起きたら舞のドアップで眼福じゃ」

金の瞳が悪戯っぽく細められる。

「抱きしめてたんだから当然でしょ、確信犯。ほら、放して」

抱きしめられるのは今更恥じらうわけでもないけれど、この体制で話はしにくい。
だいいちハルだってそんなに顔を覗き込まれながらの会話は好きじゃないくせに。
感情が読み取りやすくなるからね。
ちょっと抵抗すれば素直に放してくれ、二人して起き上がる。
あ、ちょっと頭ぼやっとする。
泣いたせいかな。
うーん、慣れない感覚。

「ハルは練習はよかったの?時間取らせちゃって、ゴメン」
「途中、幸村が来て許可してくれたから平気なり。
 俺も連日練習で疲れて眠かったしちょうど良かったなり」

半分本音、半分気遣い、かな。

「そっか……。あのさ、うん。その、ありがと」

ぼそっと呟く。
泣いちゃったから恥ずかしいのだ、一応。
こんな乙女心が私の中にまだ残っているとは驚きだけど。
けっこう我が侭な事言ってた気がするし。
泣くと記憶が曖昧になっていけない。
するとハルはちょっと口角を上げて、頭をぽんぽんと撫でる。

「どーいたしまして。舞はもうちょっと寝ておけよ」
「え、でも仕事」
「渡瀬が若干復活したから仕事やっとるって。今は何も考えるな」

軽く押され再び、ベットに倒れ込む。

「本当に、いいの?」
「ええよ。普段、休む暇なく仕事しとるんじゃ。この位、許されるぜよ」
「別に、仕事は苦じゃないんだよ」
「それでも。寝るまで側にいてやるから、ちゃんと寝んしゃい」

そこまで言われたら、お言葉に甘えようか。
抵抗しても譲ってくれなさそうだし。
目を閉じるとゆっくりと頭を撫でてくれて、直ぐに意識は落ちた。




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