02


そのままドリンクぶっかけ自滅(?)事件は事故という事で処理された。
ああ言われてそのまま私がやったと言えばこれからの健気さに傷をつけるからね。
谷岡さんはとても悔しそうにしてたけど。
同じ事を繰り返しても何にもならないからやめてくれると助かる。
いちいち騒ぎを起こすのは本望じゃない。
ここは合宿で、テニスの練習に来たのだから、谷岡さんのハーレムじゃない。
とりあえず一件落着って事にしたら、休み時間にハルに引っ張られて精市先輩の部屋に。
何故かみんなも勢揃いである。

「舞」
「はぁ」

ハルに名前を呼ばれて曖昧に返事を返す。

「えっと何?今朝のこと……だろうけど何か問題でも?」
「あれは事故じゃなかろ」
「自分でワザとやったというのが確率としては高い。転んでも頭からかぶるのはない」
「いや、そうですけど。それで心配して下さるのは嬉しいですけれど平気ですし」
「問題なのはそこだけではない」

弦兄の当社比二割り増しの眉間の皺を寄せている。

「というと?」
「舞、キミだったらあんな事態避けられたでしょう?」

精市先輩が優しく微笑みなさりながら言う。
あー、なんかこういう笑顔の時ってあまり機嫌がよろしくない。

「いやいや、ドリンク作りの時間ですし。一緒に仕事してるんだから無理ですよ」
「渡瀬さんが谷岡さんのせいで体調を崩しているのに一緒に仕事なんて舞さんらしくもない。
 効率を考えるな別々に仕事をさせるはずなのでは」
「朝に仕事は少ないですよ」
「そらごとばぬかせ。休む暇なく働いちょるくせによういうぜよ」

休んではいるんだけど。

「舞は自衛本能が鈍すぎる。いや、ほっといている、のか。もう少し自分のことを気にしろ」
「ふふ、弦一郎も人のこと言えないよね」
「精市!」

たしかに。
このタイミングで言う精市先輩も精市先輩だけど。

「舞ってむしろ自分の事を傷つける傾向があるよな。見ていて思ったんだけどよぃ」

どうだろう。
あるのだろうか。解らない。
けれどないとは言いきれない。

「心配おかけしました。騒ぎもおこして時間もとらせてしまいましたし。
 もうこんな事は起こさせませんので、平気です」
「そういうことを言ってるんじゃなか。俺達が言いたいのは」

『休憩時間終わりだよぉ!みんな練習再会してね!」

放送が流れる。

「計ったな?」
「さぁ、そんな事はないですよ蓮二先輩」

仕事の開始ですから、と部屋を出ようとすると精市先輩が呼び止める。

「舞は谷岡さんにやられてどう思った?……ねぇ、俺達がこうやっている意味、わかる?」
「……精市先輩はいつも酷な事を言いますね」

それで何も言わずに外に出た。
これ以上、谷岡さんと接触しないようにしないと。

「……わかってますよ。精市先輩」

でも、私にはそれが時々、恐くなる。



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