04


ホールで勉強する時の定位置。
私の右隣はハル。
左は弦兄で、そのさらに隣赤也。
赤也を取り囲むように蓮二先輩に、精市先輩。
正面にはヒロ先輩。
ヒロ先輩の隣はジャッカル先輩、丸井先輩と並んでいる。
そして学校ごとに手前から
氷帝、立海、四天宝寺、青学。
青学は隅に追いやられた形だ。
もっとも勉強会としょうして谷岡さんと仲良くしてるから気にならないようだけど。

「なぁ舞」
「何、ハル」
「手塚に協力するんか」
「こっちの利益を守る為にね」
「舞は多情やから心配なり」

心配、という言葉にハルに顔をむける。
古典の教科書と睨めっこをしているハル。
机に覆いかぶさる悪い姿勢だから表情はあまり見えない。

「多情って、別に浮気はしてないよ」
「手塚に微笑みかけてたけどな。ま、そこは心配してないなり。
 そうじゃなくて舞は情をかけやすいから」
「情って。そんなにかけてないよ」
「舞ってどこか閉鎖的じゃからなー。
 人とあまり関わろうとしないっていうか」
「積極的に人とは関わろうとは思わないけど」
「でも、こうやって強制的に世界が広げられてとるから。
 どんどん舞の中に人が増えてっとる」
「…………、それで?」
「舞がテニス部に入ったのは舞にとって確かに良かったと思う。
 けど、時々後悔するんよ。こういう時とかにな」

ようするに私の世界が広がる事で、自分の存在を薄れるのが嫌なのだろうか。
かわいーな。
嫉妬、とかとはなんか違うけど。

「ごめんね、あんまり一緒にいてあげられなくて」
「別に」
「就寝前に、ハルの部屋に行くから。色々おしゃべりしよ?」
「ピヨ」
「大丈夫だよ、ハル」

そっと頭を撫でる。
梳いてもまったく引っかからないさらさらな銀の髪。

「私の身内はみんなだけだし。
 それにハルは特別だよ、やっぱり」

ハルの側にいるととても心があったまる。
他のみんなといても落ち着くけど。
こんな気持ちになるのはハルだけだ。

「……好いとうよ」
「うん。私も好きだよ」

こうやって好きだって言ってくれるだけで十分だ。
こういう事に対しては急に不器用になるハル。
けれどこうやって好きって言ってくれて。
一緒にいてくれるだけで、救われる気分になる。

「舞、幸せ?」
「ハルのおかげで」

谷岡さんには悪いけれど。
私はこの場所を失いたくないから。
みんなは守るよ。私が。

「いいムードな所、悪いけどさ」

精市先輩に邪魔されてむっとしたハル。
苦笑いしながら精市先輩に見ると、小さい紙を渡された。

「四天宝寺の財前から」
「?はい。ありがとうございます」

受け取って中を見る。
いったい何をしたんか、とすごく簡潔な言葉が書いてある。
もう乾さんは動き始めたのか。
青学の人達を見ると乾さんだけ輪から外れて騒いでいる様子を見ている。
いい傾向だ。
客観的にみようとしている。

「どうしたん、舞」
「ん、ちょっとね」

財前君に返事を書くためにシャーペンを握り直した。




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