03


『みんな、時間終了だよ!これから勉強時間になるのでホールに集まってね!』

キャハ、と聞こえるような放送に一瞬、力が抜けた。
体力がないと思ったから放送をお願いしたけれど、やめた方が良かったかも。
しかも時計を見て見ると五分はずれてるし。
時間にルーズなのはやめて欲しいんだよね。
こっちはきっちり予定を立ててるからさ。
さすがに腕時計をつけたまま部活に参加できないし。
時計ばっかり見ているわけにもいかない。
放送は大切なのに、気がつかないのか谷岡さん。

溜め息をついて、ノートを閉じた。
勉強用具を持っていく為に部屋へ。

「……渡瀬先輩?」

部屋で、渡瀬先輩が座り込んでいた。
心なしか顔色が悪い。

「あ、舞ちゃん」

それでも私をみると笑顔を作って立ち上がろうとした。
けれど、体がふらついたので慌てて支える。

「体調が悪いなら無理しなくていいです。
 みんなには言っておきますから。
 今日は一日、休んでいてください」

伝わってくる熱の高さ。
ストレス、それから過労によってだろう。
体調が悪いままマネをされても効率がかえって悪くなる。
スポーツマンは体が資本なのに熱を移されても困る。

「けど、そしたらマネの仕事が」
「谷岡さんにやらせますし、一日二日なら平気です」
「無理だよ。こんな事、言いたくないけど谷岡さんほとんど仕事してないし。
 なんでいるんだろうって思っちゃうぐらいで」
「今、先輩が気にする事じゃないですよ。
 それならさっさと体を直して下さい。
 谷岡さんが仕事をしないより迷惑です」
「……そうだよね、ごめん。ありごとう」

私から離れてふらふらとベッドに倒れ込む先輩。
それを見届けてから勉強用具を持って、部屋を出て行こうとしたら谷岡さんが入ってきた。

「あ、舞ちゃん。って、真鈴先輩どうしたんですか?」
「ちょっと体崩したみたい」
「えー、大丈夫ですかぁ?」
「平気。ありがとう」
「病人は安静にしてあげるべきだしさっさとホールに行こうよ谷岡さん」
「うん!」

誰のせいだと思ってるんだ、誰の。
とは口には出さずに谷岡さんと歩きだす。

「先輩が体調崩したから谷岡さんの仕事の負担が重くなるけど宜しくね」
「うん解った!」
「……ま、私も手伝うけどね」
「ありがと!ねぇねぇ舞ちゃん」
「何?」
「立海のみんなの学校生活ってどんなの?」
「私は二年だから赤也のぐらいしか細かくは知らないよ。
 谷岡さんのご希望には答えられなくて申し訳ないけどね」
「舞ちゃん、私達って友達だよね?」

いきなりなんだ。
しかも友達って言葉にだして聞かないでよ。
そんな事を聞くのって下心しか感じない。

「そうだね、一緒の空間にこうやって長くいるから他人とは言いがたいかな」
「だよね!なら私の事も名前で呼んで欲しいなぁって。……駄目?」
「……私、あんまり人の名前を呼ばないんだ」
「えーでも立海のみんなには」
「それでも半年はかかったよ」

お互いに名前呼びにして親しさを出したいのか?
その方が立海のみんなに近づきやすいもんね。
なんだかんだっでというかあまり私は谷岡さんと必要以上に親しくはしなかったし。
みんなにも近づく機会は少なかったものね。
自分のいる学校を中心に回るのは当然だもの。

「いいよ別に」

名前呼びにする事がイコール特別だと思ってない。
突き詰めて言えば名前なんて個別を識別するための記号。
親しくない人の名前なんて好きでもなんでもないからね。

「愛里ちゃん」
「うん!でも舞ちゃんはいいな。
 立海の人達ってみんな優しいもん」
「否定はしないよ。けど青学の人も愛里ちゃんを大切にしてるでしょ」
「えー、そんな事ないよぉ」

嬉しそうだな、おい。
あれか?
私はお姫様だから当然でしょう!って感じ?
自分をお姫様って思う神経が凄いよね。
そんなの幼稚園の時に卒業してよ。
私は特にそんな事は思ってなかったけど幼稚園児ってどこかそういう所があるからね。
谷岡さんって幼稚園児以下だな。

「ねぇねぇ、雅治ってカッコいいと思わない?」
「……テニス部員がなぜかみんな美男がそろってる事は否定しないけどね」
「テニスが強くて、ミステリアスな所が心引かれるっていうかぁ……。
 私、雅治の事が好きかもぉ」

無謀だ。
無謀すぎる。
ハル、どんまいだ。
そしてハルは私の彼氏なんだ。

「舞ちゃんは協力してくれるでしょう?」
「さぁ、それはさすがに本人の気持ち次第じゃないのかな」

ハルは谷岡さんは選ばないと思うよ。
私がいるとかそんな事以前にね。
本当に困った人だ。



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