02


乾さんが来たのは吃驚した。
行動が早過ぎでしょ。
何も解決する余地もなく来たのはわかるから足止めさせてもらったけど。
このままだったらまた喧嘩してはい、残念。
みたいな結果になって終わるだけ。
口出しはあまりする気はなかったけど。
それに乾さんって私の事が苦手みたいだから。
ハルといればそのぐらいの読心はできる。
けれどああやって気になる事を言わないと引かなかっただろうし。
うーん、と内心思いつつも立海のコートの中に入ると手塚さんが近寄ってきた。

「真田舞」
「はい、どうしましたか?」
「すまない」
「……はい?」
「乾の事を諭してくれただろう。
 柳の事もあるし、色々、苦労かけてしまっている。
 これは青学の問題なのにお前を頼ってしまっているしな……」
「あぁ、聞いてたんですか。
 協力というかですね。
 やっぱり谷岡さんの影響で合宿の雰囲気がギシギシしているのが気になっただけです。
 それで影響がでたら困りますから。
 利害の一致って事ですよ、単に」
「そう、自分の為といい張る所はお前の美点だな。
 そういう所、少し兄と似ている」
「そうですか?」

あ、ちょっと嬉しいかも。
弦兄とは似てない似てないって言われるから。
似てると血の繋がりというのか。
そういうのが感じられるから。
本来、血ではなく精神的には繋がっていない私だから。
顔立ちはともかくして。
性格は全然似てないって思われてもしかたない。
けれど性格は環境で育つ。
ハルと長くいたからそこは上手く誤摩化されていたけれど。
けど私って別にハルと似てるわけでもないし。
説明、つかないんだよね。
私の性格とかアイデンティティとか。
矛盾しているのは、何も谷岡さんだけじゃない。
むしろ一番矛盾してるのは私じゃないのだろうか。
だけど。
だからこそ。

「ありがとうございます」

お礼を言ったら、不思議そうにされてしまった。
うん。
私、この人は嫌いじゃないかも。
真田家は何故か手塚さん一家と縁あるし。
ほら、また一つ共通点発見だ。

「私、手塚さんといるとなんだか嬉しくなります」
「そうか。良かった」
「何かあったら言って下さい。
 なるべく協力しますから」
「助かる」

一つ頷いて自分の練習に戻っていく手塚さん。
みんな真面目に練習しているし。
選手入れ替えでの悶着があまりないのは助かった。
立海の皆は事情を察してくれたけど。
他校はそうはいかないし。
青学はある意味で円滑な内部関係だけど他のがね。
個人的には氷帝が一番あれだろう。
あとは赤也は今の所、問題はないかな?
上手く財前君と交流を図れてる。
今回ので乾さんは何かしら動くだろう。
それがどうなるのかが、重要なポイントか。

あ、丸井先輩、体力、上がってきたな。
そろそろ新しい妙技を増やしてもいいかも。
本人もそれはちらりとは思っているだろうし。
よし、後で話をもちかけてみよう。
丸井先輩の欄に予定を書き込んで他の選手に視線を移した。



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