04


試合の間、何故か谷岡さんが応援に来てた。
いいのかなぁ。
渡瀬先輩、可哀想だよ。
しかたない。
手伝うか。
試合は録画してあるし。

「大丈夫ですか、渡瀬先輩。手伝います」
「あ、舞ちゃん。いいの?」
「今は暇ですから、比較的」
「じゃあお言葉に甘えようかな」

渡瀬先輩が持っていたドリンクを半分持つ。

「限界が来る前に休まないと駄目ですよ。
 谷岡さんにまかせてもいいんですから。
 今、ちょうど暇そうですし」

谷岡さんって言葉に嫌に反応する先輩。
どうしたのだろうか。
渡瀬先輩が谷岡さんに睨まれる理由なんてないと思う。
それとも谷岡さんは全員が自分に向いてなきゃ嫌。
なんてそんな無茶を思ってなければだけど。
私としても谷岡さんがそこまで馬鹿じゃないと思いたい。
希望的観測である。

「谷岡さんって、転校する前ってどこにいたんだろう……」
「え?さぁ、他校ですし、本人からも聞いてないですからね。
 私は知りませんけれど。
 どうしても気になるなら跡部さんに頼んでみたらどうですか?
 それ相応の理由があるならしてくれると思いますよ。
 あの人は基本的に合理的ですからね」
「その、跡部君が調べた結果を聞いてね。わからなかったって」

跡部の力で解らない?
谷岡さんが金持ちでもないだろうしね。
トリップだからと言う事か。
渡瀬先輩が谷岡さんを疑い始めた、か。

「そういえば渡瀬先輩も立海の前はどこに?」
「え、あーえっと、大阪の公立の学校なの」

嘘はついていないみたいだ。
ごまかしている感はあるけれど。
そういう「設定」としてトリップしてきたのかな。
だと谷岡さんもそうなるのにその差は何か。
気になる所である。

「谷岡さんは普通の人ですし。
 何か特別な後ろ盾がない限りは跡部の力は防げないでしょう。
 異世界の住人でもない限り」
「い、世界……あはは、舞ちゃん冗談きついよ」

渡瀬先輩は気づいていた方がいいと思う。
いざと言う時の駒になるだろう。
彼女の素を出させるための罠に使える。
もっともそんな事にならない方がいいのだけれど。
蓮二先輩の為にも。
和解ぐらいは。
目をさまさせる、か。
そうだな。
ちょうどいい。
手塚さんがいる。
ハルは断ったけれど承諾しようかな。
私を使う代りに私も貴方を使ってあげますよ。
少し遠いコートで白石さんと戦っている手塚さんを見つめた。



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