03


……って。

「ハルじゃん。何?」

私の取り越し苦労で正体はハルだった。
今は練習中なのにこんな所でどうした、練習やれやと意味も込めて尋ねた。
だってさぼると後々大変なのはハルだし。
けど、ハルはなんだか力ない笑みを浮かべるだけで。
え、本当にどうした。
心配になってハルに一歩近づいたら。
キスされた。
不意で反応しきれず。
しかも手を頭に添えられるし。
離れらんない!
あれか、力ない笑みとか嘘か。
呼吸が辛くなったので胸を一回叩くと放してくれた。
けれどすぐさま抱きつかれる。

「ハル?」
「舞が足らん。
 舞不足ぜよー」

なるほど。
そういう事ですか。

「合宿中だし仕方無いでしょ。
 弦兄の目もあるし?」
「舞は不足にならんの?」

頭をあげてじっと見つめる。
……あー、反則でしょ。
仕方無い。
付き合うか。
なんだかんだ甘いのは惚れた弱みというか。
ハルとは長い付き合いだから特に何かしない。
その変わりに一緒にいないと落ち着かないのは私もで。

「ん、私も寂しかったよ」
「……それはそれで反則」

またキスされて、それで満足したらしい。
満足気に戻って行く。
全く、自由人過ぎるって、ハル。

コートに戻ると精市先輩が遅かったねと笑いかけられてしまった。

「すいません、前ので長引いて」
「ふーん。そういう事にしておいてあげる。
 アレのせいで仁王も表立って構えないってなげいてたしね。
 あー、いーな。俺も彼女欲しい」
「……古賀先輩がいますよ」

古賀先輩というのはファンクラブ会長の事。
精市先輩と小学校の頃からの付き合いなのだ。
そういえば最近会ってないな。
精市先輩にファンクラブ会長にさせられてるから忙しいんだよね。

「そうなんだよね。
 礼奈ったら本当に俺が都合いいから側においてるって思ってるんだよね。
 けなげにアタックしても全然違く解釈するし?
 俺って可哀想だと思わない?」
「日頃の行いのような、いえ、なんでも。
 きっと報われる日もきますって。
 それでですけれど今日の試合ですが」

青学よりは厳しいけれど。
あえて制限をつけてやるというのも練習のうち。
王者、は常に余裕を持って勝つからこそ。
精市先輩も面白そうだと頷いた。



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