01
全国が終わった後でも精市先輩達は部活によく顔をだしている。
高校受験もないから暇なのだろう。
赤也もけっこう喜んでるしね。
結局、同じメンバーが揃った部活のある日。
「そうだ、合宿に行こう!」
いきなり精市先輩がそう切り出した。
京都に行こう、みたいなノリだな。
「どういう事だ精市。
この時期に合宿をするなんて。
第一俺達は引退しているだろう?」
「俺を誰だと思っているんだい?
というのは冗談でね、蓮ニ。
跡部が別荘に集まってあくまで私的に一緒に練習をしようじゃないかと。
私的にお誘いがきたんだよね」
私的に、をやたら強調する精市先輩。
この流れでいくと、だ。
「勿論、ここにいる全員参加だよ。
部活がきちんとできなくて体が鈍ってるだろ。
ちょうどいい機会だ」
でしょうね。
「後二週間したら冬休みに入るから、そしたら直ぐに合宿ね」
「参加校はうちだけですか?」
「いや、あと青学と四天宝寺もだ。
じゃあ舞はこの書類を跡部に持ってってね」
「俺も一緒に行くぜよ」
精市先輩の持つ書類を奪うハル。
跡部さんが絡んでいい事があまりないからハルも心配なんだろう。
精市先輩も苦笑してる。
「舞、渡瀬さんに会ったら宜しくね」
「意外ですね。そんな事言うなんて」
「別に渡瀬さん自体が嫌いじゃないなわけではないからね。
嫌いなのは無力なくせに何もしようとしない所だからさ」
実際の所。
渡瀬先輩はファンクラブに対して何もできないでいた。
一言、助けて下さいと言えば精市先輩だって動いていただろう。
「仲間」ではないにしろテニス部員だったのだし。
助けてと言ってそのまま見捨てるほどに精市先輩は非情じゃない。
その分の対価は求めるだろうけれどそれは助けてもらっているのだから当然な事。
弱い部分を認めて、自分にできる事は精一杯して他は助けてもらう。
それが仲間としてのあるべき姿なのだから。
我慢するだけが選択ではないのに。
それをしなかった彼女は結局は何もできなかった。
勝手に守ってくれる人に甘えてた。
都合がいい人のように思われてもしかたない。
「わかりました。じゃ、行こうかハル」
「ピヨ」
手を繋いで校門を出た。
向かうは氷帝。
行くのは始めてだよな、そういえば。
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