04



夜。
提出されたレポートを見て添削して。
仕事も終わったのでお風呂に入ろうと部屋を出た。
谷岡さんはどっか他の人の部屋にいるらしく見当たらない。
渡瀬先輩は先にお風呂に行っている。
と、道の途中で声。
とっさに身を隠してしまった。
声の主は蓮二先輩と乾さん。
お風呂上がりみたいだ。
と言う事は中であったのかな。
このまま立ち去ってくれるかと思ったけれど立ち止まられてしまった。

「貞治、何度言えば解る」
「警戒心が高いのは解るが彼女は悪い子ではない。
 そう言わないで欲しいな」
「悪い人柄でもなくともミーハーではないとはまた別だ。
 現に貞治。
 今日の総当たり戦で何も思わなかったのか?
 明らかにお前達の実力は衰えてる」
「……自覚はしてる。
 けれどそれと彼女の話は関係ないだろう。
 蓮二、お前らしくもない」
「いいかげん気づけ!
 彼女はお前達にとって悪影響だ」
「それはお前が決める事ではない!
 会って数日のお前に何が解る!!
 ……不快だ、先に行ってるぞ蓮二」

立ち止まったままの蓮二先輩を置いて乾さんがいってしまった。
取り残された蓮二先輩はなんだか悲しそうな顔をしている。

「蓮二先輩」
「なんだ聞いていたのか」
「すいません」

彼女をめぐっての対立はあると思ってた。
けどこの関係はすっかり忘れてた。
あまり蓮二先輩は乾さんの事を口に出してなかったから。
完全に私のミスだ。

「少し、気が急いていたようだ。 
 確かに俺らしくもなかったな」
「谷岡さんの影響力は強いですから。
 それに人の関係といのは難しいですよ」
「昔はこいう類の言い争いはした事はなかった。
 それも、もはや昔の話なのかもしれない。
 あの頃を忘れてしまいそうだ」

昔はダブルスを組んでただけあって相当仲がよかったのだろう。
今も再会して交流を復活させたと聞いたし。
私の思考に気づいたのか蓮二先輩は僅かに微笑んだ。

「舞が心配する程ではない。
 お前は仕事が大変だろうし、三人の中で一番多いはず。
 そこまで気を回さずとも俺は平気だ。
 これから風呂だろう、露天風呂もあって気持ちいい。
 早々に入って体を休める事だな」
「はい」

頭を下げてから蓮二先輩と別れた。
気にするなって言われてもね。
蓮二先輩以外にも関係性がなくても無影響とはいえない。
無干渉とはいかない。
私もやっぱり何かしら動かなければいけないのだろう。
それでも谷岡さんの行動次第。
事前に手を打てる事なんて少ないからな……。

露天風呂は確かに大きくて気持ちよかった。
先に入っていた渡瀬先輩と雑談して。
少し疲れているみたいだったから後でマッサージでもしてあげよう。
後は部長会議に出てからメニューを作らないと。
そんな事を考えつつ満点の星空を見上げた。



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