03


図らずも。
というのは建て前で言ってみたけれど。
手塚さんの望む形で総当たり戦は全国と同じ組み合わせとなって。
柳先輩や赤也は楽に勝利をおさめた。
予想どうりに。
弦兄は全国の再来かと言うぐらい白熱して僅差での敗北。
ま、勝率は五分五分だったし。
ハルも楽に勝った。
本気ではなくイリュージョンだけで。
趣味がいいのか悪いのか。
衰える前の不二さんに化けて。
ブン太先輩達はもう物にしたシンクロすら出さず。
そして、今は精市先輩。
天衣無縫だっけ?
あれはあの状況だったから手に入った。
ましては衰えた今は無理。
だから五感を奪ってあっさり勝利。
やっぱり精市先輩がコートに入ると雰囲気が変わるな。

「情けな」

これが青学の今の姿、か。
手塚さんを覗き見ると険しい顔をさている。
肝心の選手達は不思議そうな顔をしていた。
そんな表情できるだけまだましか。
その程度にはまだ生きている。
私には関係ないけど。
身内ならともかく、それ以外の為にそんな骨が折れる作業してたまるか。

「お疲れ様でした」

ドリンクを渡して反省点を述べていく。

「なんか全然、楽しくなかったぜぃ」
「青学、たるんどる!」

不満そうだな、弦兄。
余裕、余裕と言う顔。
そりゃあね。
向こうが衰えてるけどこっちは先輩方も引退しても練習はかかさなかった。
実力の差は開くばかり。
唖然とした表情はそんな事態は全く知らなかったのかな。
……ねぇ、谷岡さん?
彼女がこっちに来たのは全国の後だから知らなくても当然か。
知っててもここまでの差だとは思わなかった?
『原作』では接戦だったからね。

「……なん、で?
 私が来たのは後なんだから影響はないはずなのに。
 この世界はどっか可笑しい」

思わないのかな。
みんな生きてるきちんとした人間だって。

「トリップした人が私以外にもいるのかも……」

おっと、なかなかいい考察。

「舞?」
「何でもないよ、ハル」
「アレがどうかしたんやろ?」
「どうにもなってないよ。
 元からああなんだから、たぶん」

ハルに促されてこの場から離れた。
谷岡さんがどんな子でもかまわないけれど。
テニプリについては話さないでもらいたいな。
知らない方がいい。
そんな存在は。

「真田舞」

コートから出る直前、手塚さんに声をかけられた。

「あいつらはまだ、元に戻れる。
 頼む、その手伝いをしてくれないか」
「舞はうちのマネぜよ。
 なんで他校の為にそんな事させなきゃあかん」

私が答える前にハルが答えた。
別に、他の仕事に支障が出ないぐらいなら平気だけど。
どうしてかと視線を送ったものの無視されてそのままコートを出た。

……。
全くややこしい事になりそう。



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