03


なぜか成り行きで各校一人ずつ他の校に行くと言う事で収まった。
内輪で大分揉めたけれど四天宝寺のは財前君が青学へ。
そして赤也が四天宝寺へ。
部長達が「経験」の為に変えるらしい。
だからあからさま、手塚さん、浮いてるけれど。

「赤也、四天宝寺に迷惑をかけるなよ。それから、わかってるね」
「ウイッス!」

経験、も嘘じゃないけれど偵察という意味を込めているのだ。
本当はこういうのはハルとかがいいのだけれど。
ダブルスを崩すのは練習の支障がでるし周りの反応を見て、というのもある。

そして問題の谷岡さんと言えば。

「なんだか、新鮮だね!!」

嬉しそうだ。
すごいなー。
すっごくポジティブだよ。
いっそ羨ましいぐらい。
なりたいとは、思わないけれど。

「あは、光ってカッコいいからチョーラッキー!」

小さい声だけれど私には聞こえてくる、独り言。

「でも、雅治が来てくれないのがショックだなぁ……。
 もう私に落ちたの同然なのにさ。
 それに私、雅治って好みだしー。
 あぁ、けど彼だけを構ったりはしないもんね。
 私ってやっさしー!
 邪魔な奴がいるけどぉ……。
 キャハハハ!勝ちが決まったゲームほど楽しい物ってないよねぇ」

世の中、そんなに甘くはないとは思うけどね。
私の関わりの所でやって欲しいよ、本当。


「舞〜〜」
「何、ハル」

練習中、疲かれた、なんて言いながら私の側にくるハル。
ハルは体力がないわけではないのに気力がないせいで無い扱いされる。
要領がいいというのだろうか、これ。

「アレの視線が妙にねちっこいんじゃが」
「アレ?」
「谷岡」

アレ扱いか。

「んー、みんなの事をおとすらしい。脳内では決定事項」
「無謀ぜよ……」
「だから誰かと側にいなよ。
 彼女と二人っきりにならない事。
 告白なんかされたら、それこそ大変な事になる」

逆恨みの嵐にまきこまれて部活どころじゃくなる。
ちらりとコートの外で観察。
題して「テニス部ウォッチ」をしている。
谷岡さんを見て練習メニューの変更をハルに伝えた。

「ハル、外周、もうちょっと増やそうか」
「ピヨ?」
「カモフラージュ。
 それから、そうだね。
 やっぱり右手と左手の握力の差、気になるから右手だけで腕立て百を三セット加えっよか」
「急に増えたなり……」
「はいはい、文句言わない!
 練習量の増加なんて今更でしょ!」

あえて谷岡さんに聞こえるように言う。

「それから、精市先輩、呼んでくれる?」
「プリ」

私から離れていくのを見て谷岡さんは勝ちほこった顔をした。
えー……。
私、谷岡さんに謝ったほうがいいのかな?
ハルとこれでも付き合ってるわけだし……。
ま、なるようになるか。



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