03


四番コートに入る。
全員まだ基礎トレしている。
お、忍足謙也さん、腕に筋肉ついたなー。
そんな事を思いつつ見て回っていると白石さんが声をかけてきた。
早く基礎トレが終わったらしい。

「お、舞か。
 俺らはマネいがいないから誰かわかんなかったけど舞なら安心やな」
「ありがとうございます、白石さん。
 でも、マネじゃなくてトレーナーとしてなんで」
「そうなん?あー、じゃあ」
「あ、舞やん!」
「人の話を邪魔するんじゃない」

飛びついてくる遠山君を受け止める。
また力ついたなこの子。

「舞、会いたかったで!」
「そう?ありがとう」
「きーんーちゃん?」
「毒手いややー!」

変わらないなー。
あ、でも半年ぶりだから当然か。

「でもあの藤岡さん?」
「谷岡さんです」
「あ、せや、谷岡さんじゃなくて安心したん」
「あー、まぁ、でも面白いですよ?」
「やられてないから言えるんや……けどな、ほら見てみぃ」

白石さんを見ると、私の方を見てあからさまに残念な顔をする人、数名。
あぁ、話の流れ的に言うと谷岡さんに頬染めてた人口の中の一人か。

「謙也と、銀、ユウジは駄目やな」
「まぁ、頑張って下さい」
「ワイ、あのねーちゃんが臭くて嫌や」

谷岡さん、あまり香水はつけてなかったと思うけどな。
でも金太郎君は野生だから、かな?嗅覚とか鋭そう。

「それより練習あるのみ、ですよ」
「せやな、ほら行くで金ちゃん!」
「ちゃんと見ててな!」
「はいはい」

去って行った後に近場のベンチで練習風景を見て、
あらかた見終わって氷帝に行こうかと思った所にピアス少年、基、財前君が。

「真田……だったけ?」
「そう」
「あの、谷岡って女、なんなんや」
「それを私に言いっても」
「同じ部屋なんやから、少しぐらいわかるやろ」
「昨日の今日で無茶ぶりだなぁ、もう。
 うん、まぁ、隠してるらしいけれどミーハー。
 テニス部狙いの子。って事じゃないかな?
 あ、今日はここには来ないから安心してもいいと思う」
「そか……」

眉間に皺を寄せる彼。
谷岡さん、嫌われてるなー。関係ないけど。

「ほんと、あんな奴に騙されるなんて阿呆やろ」
「人の趣味はそれぞれだし?君がミーハーなのをばらすのは勝手なんじゃない?」
「……なんで俺がそんな事しなきゃあかん。面倒や」
「だって財前君、先輩の事、大切なんでしょ?なら、自分でどうにかしなきゃ」
「やけにさっぱりとした意見やな、自分」
「そう?まぁ、私も、私の守りたい者を守るだけだから」
「真田と組んだら、楽に情報が手に入ると思ったんやけど」
「取引?」
「せやな」
「……、ま、いいか。じゃあ、何かあったら頼らせてもらうから。
 それから私は名前で。そうしないと弦兄が来るかもしれないし」
「おん」

財前君って素直じゃないなー。
それに愛されてるじゃん、あの人達。



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