春と共に


「好きです、長倉先輩」


校門の近くにある桜の木の下。
淡いピンクが世界を彩った中。
空よりもなお青い藍色の髪が風で弄ばれながら彼、幸村君がそう言った。
私が現れるのを待っていたみたいで花びらを髪や肩に乗せていて。

「……いきなりだね」
「だって先輩が言ってたじゃないですか。だから待っていたんですよね」

あぁ、確かそんな事を言っていたっけ。
幸村君が訪ねてきた事があったから。


『長倉先輩の理想の告白シーンってどんなのですか?』
『理想の?そうだなー、卒業の時に桜の木の下で告白されてみたいな』
『ふふ、少女趣味ですね』
『女の子なんて一回はそういう夢を持つものなのよ。
 それにないからこそ憧れるというか』


そう、確かそう答えて。
だから幸村君は今、私が卒業するこの時に言ってきたのだろうか。

「先輩、返事は?」

そう言われて、考えた。
答えは決まっているけれどただ返すのは無粋な気がする。
考えて、手に持っている花束からそっと白い花を抜き取る。

「覚えててくれて嬉しいな。
 あの時は女心が解らないなー、って思ってたけれど訂正するね」
「俺は男だから解りませんよ。
 ただ、どうすれば喜んでくれるか考えただけです」
「そうなの。嬉しいな」

静かに近づきながらの会話。
幸村君の手前で立ち止まってそっと彼の髪にさす。

「うん、よく似合うね。藍には白でしょう」
「……先輩。普通逆です」
「良いじゃない、綺麗よ」
「綺麗、だなんて女っぽいて言われているようでむかつきます」
「ひどい。褒めてるのに。
 いいじゃない、言わせておけば。
 褒め言葉なんだからそのまま受け止めなさい」

それでも気に入れないようで自分で花を取る幸村君。
そこにそっと顔を近づけてそっとささやく。

「追いかけてごらん。高校生になった時に、精市君も花をくれたらそれでいいわ」

驚く顔をする彼に笑いかけて隣をすり抜ける。

「夏希先輩、待ってて下さい。絶対に追いかけますから」

後ろからの声に一年後の未来へ思いをはせた。


戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -