神に祈る


教室で必死に拝んでるブン太に私は呆れの視線を送る。

「……何やってんの?」
「拝んでんだよ、見りゃ判るだろぃ」
「だから何で拝んでるの?」
「この間の数学のテスト、点数が悪かったら家のお菓子の量が減るんだよ!」

なるほど切実だな。
そして次の授業で数学のテストが返されるからな。

「ブン太って神様信じてないくせに」
「困った時の神頼み!」
「ひっどー」

今度は冷たい視線を送ってみる。

……ねぇ。

「神様ってさぁ、日本におけては比較的どーでもいい存在じゃん」

普段神の存在なんて意識しない。
海外だと神、宗教は生活と密着してるけど。
なのにこんな時だけは祈ってみたり感謝なんてしてないのに行事にはなってたり。

「考えてみれば傲慢だよね、それ」
「日本人だから」
「答えになってねーよ」
「夏希はもっと女の子らしくなるようにお願いしたほうがいいんじゃねえか?」
「うっさい」

んな事言われたかない。

「あのさ、ブン太」
「んだよ」
「神様は何もできないんだよ」

……そんな曖昧な存在よりさ

「神様は見守るだけなんだよ」
「拝んでる奴にたいしていう台詞かよぃ!」

神様は誰も救いはしないんだ。
いつだって残酷なぐらい裏切るから。

「夏希は神様って信じないのか?」
「信じてないよ」

そう、信じてない。
自分を救うのは何時だって己自身。

……きちんと存在してる物だってあるから

「ふーん。俺は信じたい時に信じる!」
「傲慢だって、それは」

普段信じない人がいざと言う時に信じたら人間だって怒るよ。
そして神様も怒らないなんて寛容な心があるとはとてもとても思えない。

……だから、私の事を見てよ
 私はここにいるんだから

「ほら、だって本当に偶然とか運命とかさ。
 誰かの手によってできた物じゃない事にそれを感謝したいって思ったらそれは神様しかいないだろぃ」
「神様は人が作り出した空想の人物だよ」
「夢がねーな」
「夢ばっかりは見て生きてはいけないからね」
「信じてるよ、俺は。神様とか偶然とか。
 夏希と出会えた事は偶然な運命だからな!」

……あ、不意打ち。卑怯だ。

「……矛盾、してるよ」
「大ジョーブ。ちゃーんと夏希の事見てるぜぃ」
「え、うそ、気づいてたの?」
「俺が夏希の事で判んない事はないっつーの」
「馬鹿!」

照れ隠しだけど、それも判ってるみたいな顔。
なんかむかつく。

「やっぱ俺って天才的ぃ〜!」
「……あっそ。私もあんたに会えた偶然な運命って奴は神様に感謝してもいいかな」


因に返された数学のテストは良かったらしい。
お菓子死守できったって騒いでたから。


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