願わくば


色鮮やかな光が

夜空を彩る

「綺麗だねー」

先輩は不思議な人だ。


容姿が良いわけでもない。
強い個性があるわけでもなく、特技が特にあるわけでもない。

月並みな人

でも。
それなのに俺は彼女に引かれる。

「雅治君と一緒にいるのも久しぶりだよね」
「……ええ」

誰もいない境内で、短し時間だけど。
先輩を占領できる事に少し優越感を感じる。

「少し、お参りしよっか」
「はい」

歩き出す先輩の一歩後ろをついて行く。

「夜の神社ってまた新鮮だね」
「お化けさんが来ないといいですね」
「ちょっと!私がお化け駄目って知ってて言うの!?」
「プリッ」
「もぉ、すぐそれなんだから」

お賽銭箱の前に立ちお賽銭を投げる。
手を叩いてお祈りする姿を横目で見ると真剣に願う姿に思わず忍び笑いする。
高二の先輩は今でもジンクスとかを本気で信じている人なのだ。

「何を願ったんですか?」
「恋人ができますようにって。周りの人に恋人いる人多いから」
「……願い事って言うと叶わないんですよ」
「意地悪!」

むっと唇を突き出しての感情表現。
誘ってるんじゃろうか。

「じゃあ、雅治君は何を願ったの?」
「美奈先輩は後輩の願いを潰す気ですか?」
「人の願いを潰しながら何言うの」
「ピヨ」
「まーさーはーるーくーん!」
「無知は罪じゃ……」

人の気持ちを知らずに……。

「俺じゃあ、駄目ですか?」
「へ?」
「恋人」
「え!?え、ええええええ!?」

驚いて顔を真っ赤にする先輩。
本当に楽しいな、この人。

「嘘ナリ」
「!先輩からかっちゃ駄目だよ!」
「騙された方が悪いんです」
「雅治君が騙せない人なんているの?」
「幸村とかはキツいですよ」
「あー、幸村君はねぇ。さ、帰ろっか」
「はい」

こうやって二人で並んで歩いてる姿は恋人同士に見えるのだろうか。

見えたら、いい。

「先輩」
「ん?」
「俺、本気じゃから。じゃ、それじゃ」

別れる時。
そう言い残して走り去った。

後ろからする叫び声に、そっとほくそ笑んだ



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