チョコよりも甘い


胸焼けしそうなぐらいに甘い匂い。
思わず眉をひそめたのに罪はないと思う。
カオスな空間になりつつある家庭科室。
ただいま調理実習でカップケーキを作っている。
調理部とかまともなに作ってる子もいる。
けど、いかにも料理なれしてないファンクラブの子がね、うん。
このクラスには幸村がいるからみんな必死。
とうの本人は少し笑顔が引きつってる。
これが自分に回ってくると思うと辛いだろうね。
私は楽しいけど。

「おーい夏希ちゃん、何考えてるのかな?なんか怪しい笑みを」
「何も。ま、みんなが渡してる所を見て生殖行為にせいぜい励みたまえとは思うかな」
「遥か高みからの物言いだ……」

よし、ラッピングして完成だ。


本日は晴天なり。
だからお昼は屋上で。
私は自他ともに認めるゴーイングマイウェーな性格。
一人で弁当を取る事もままある。
角度によれば自分のクラスが見れる屋上。
確か他のクラスも調理実習もあったらしくこのお昼休。
幸村にあげようとしている為か扉のあたりに人が群がっている。
その様は、まるで。

「フハハハ、人がアリのようだ!」
「開口一番でそれか」
「ん?その声は仁王か。大方、女子から逃げて来たのが正解でしょう?」

屋上の上の方から声がおりてくる。
ひょっこりと姿を現した仁王。

「駄目だぞ。折角作ってあげやっているのだからありがたく貰いなさい」
「やじゃ」
「残念。お前らが困っている姿を見たかったのだけど」
「性格最悪なり」
「最上の褒め言葉ね」

仁王とはおさぼり仲間なのでそれなりに仲がいいようなきがしなくもない。
しかしいつまでも付き合ってはお弁当を食べる時間がなくなる。
仁王が近くにやってきたのを無視して、食事を開始。

「……なら、そのケーキくれんか?」
「見返しは?」
「んー、チロルチョコ」
「却下」
「しかもレアもののイチゴミルクモチなり」
「何!?」
「今ならまたもレアものカボチャプリン味もつくぜよ」
「……よし!いいだろう!」

レアものなんてすげぇ!
あれってプレミアムもあったりするんだよね。
北海道チーズチョコとか母の日用のプレミアムカップの中にあるオランジェとか。
ホームページ見た時に発見した。

「しかし何で持ってるの?」
「ブンちゃんにもらった。弁当持ってくんの忘れたいったらくれたんぜよ」
「丸井がねぇ。ま。いいや頂戴」

差し出されたチロルチョコに微笑みを隠せない。
甘いのも好きなんだけど私はこのチロルチョコの包み紙が好きなのだ。

「はい、ケーキ」
「サンキュ」

もふもふとケーキを食べる仁王。

「どう?」
「まずまず」
「ふふ、良かった」

仁王って舌、さりげなくいいからね。
そう言ってもらえて何よりだ。
ちょっとびっくりしたような顔をされて睨みつける。

「何さ」
「いや、純粋な笑顔もできたんじゃなって」

失礼な!と怒ろうとしたら。

「普通な笑顔は案外可愛いなり」

軽く口説き文句なのに顔色を変えずにケーキを咀嚼するものだから毒気がぬかれ。
大人しくチョコを口の中にほおり込んだ。
あー、甘い。


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