06


「そういえば、真田君。柳君にどんな本を借りたのですか?」

彼女と別れたのち、何気なく尋ねた。
それに何かヒントがあると思わないが純粋に好奇心で。

「『エルマーのぼうけん』というのだが、知っているか?」
「ルース・スタイルス・ガネット、ですよね。私も幼い頃に読みました」

アメリカ人の作家である。
話は主人公の少年、エルマーが捕まった子供の龍を助け出すためにどうぶつ島に乗り込むという話だ。
『エルマーの冒険』として日本でアニメーション映画化もされた。
しかしそれは児童文学作品である。
私達が読む年齢ではあるまい。
加えて柳君にわざわざ借りるまでして、だ。

「甥が読みたいとだだを捏ねてな」
「佐助君、でしたっけ」
「あぁ。今は六歳でな。生意気で困る」
「真田君に懐いていらっしゃるのですよ、きっと」
「おじさんおじさん連呼するのにか?間違ってないが確実にニュアンスが違う」
「それはそれは……」

真田君は気にしているようだけど案外、そんなことはないと思う。
確かに中学生にあるまじき威圧感を持っている。
口調も古めかしい表現をする時がある。
それで忘れがちだが物凄く老けているというわけではない。
おまけに中身はまだまだ中学生だ。
仁王君あたりはそのギャップを笑ったりするけれど。

「佐助君もよく読書を?」
「いや。ゲームばかりしている。今時と言えばそうかもしれん」
「ふふ、真田君はゲームの相手をさせられているのですか?」
「俺はああいうのは好かない。目も悪くなる」

真田君がゲームをする姿は思いつかない。
けれど面倒見のいい真田君のことだから文句を言いながら相手をしていそうだ。
悪戦苦闘している姿はきっと微笑ましいこどだろう。

「だから、急に本を読みたいなんて言われた時には驚いた」
「何か理由があったのでしょう」
「なんでも公園で親しい子が読んでいて気になったと言っていたのだが。
 今までそんな事はないのに、何を考えているのかさっぱりわからん」
「その子に興味があったのでは?」
「どうだろうな……。
 あぁ、その子の姉に題名を教わったとかなんとか……」
「姉、ですか」

なんだろう。
何かがひっかかる。

「俺はその本を持っていなかったから図書室に借りに行ったのだがなかった。
 それで一緒に本を探してくれたやつが蓮二が知っていると」
「ちょっと待って下さい。その方って同級生ですか?」
「ん?そうだ。」

ふいに。

頭の中で全てが繋がった。

彼女は状況に応じて、つまりいくらでも変更がきく。
次の仕掛けを作っている間、私は前のお題を解いているのだから。

だから、きっと、あの人だ。

「……そうですか。ありがとうございます」

お礼に真田君は首を傾げた。
私はそれにただ笑みを返した。

さて、では回答を提出しようではないか。

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