04


持っていた手紙を静かにしまう。
彼女、手紙の主との文通を望んだのは私だけれどきちんと来るなんて。
書いてあるのは本当身近なこと。
最近なにがあったのか。どう思ったのか。
好きな事。苦手な事。
そんな日常の特筆することでもないことを書いてある。
勿論、ヒントが出ないようにしているからというのもあるのかもしれない。
それでもそれを選ぶということが何よりも彼女の性格というも自然わかるというものだ。
手紙というのはじっくり考えられるからいい。
だからこそ、思いを正確に伝えられる。

最近気づいたことがある。
こう彼女、が近くにいると思うと周りの女性に目がいく。
テニスばかりであったし向こうから近づいてくることが多いがゆえに、新鮮だ。

不思議なのだ。
全く見ず知らずであろう人の気持ちを知るということは。
こうして私の知らないところで知らない思いがあり、日常がある。
それは、そう。一番始めにきたあの手紙に書かれていたことでもあって。
ぐるりとクラスの中を見渡す。
それだけで新たな発見があると知ったのはつい最近の事。

「最近、いつにもまして楽しそうだな、柳生?」
「柳君」

少し微笑みをのせて目の前に座った柳君。

「柳生のモットーは知っているが、ここ最近は特にだ。
 何があったのか興味深い。仁王は柳生は青春しているなんて言っているが」
「青春してますよ」
「この歳は青春時代だから、か?しかし仁王のニュアンスは違ったようだ。
 それに駆け回っている理由も知っているものの……」
「知っているのですか?さすがですね。柳君には隠し事ができなさそうだ」
「なに、相手を知っているだけさ。親しくはない。顔見知り程度というやつかな。
 なかなか破天荒なやつだと興味はあったがこんな事をするとはと関心していた。
 柳生の反応も、だな。のるとは予想済みではあるが」
「自分でも驚きですよ」

柳君との会話は嫌いではない。柳君の落ち着いた雰囲気と物言いが性に会うのだ。
柳君とはテニス部の中でも特に親しい部類に入る。

「そういえば柳生。この前、読みたいと言っていた本だが図書館にあったぞ」
「そうなんですか?ありがとうございます。今度行ってみますね」
「すまないな。先に俺が読んでいてな。今日返す。一緒に図書館に来ないか?」

彼が持っていた鞄から本は確かに私が読みたいと思っていたものだ。
ふと、本からはみでいた紐が目につく。
どこかで見た事があるような。

「ちょっと失礼します」

本を手に取って、その紐をとってみる。
やはり、である。
先日、真田君が買ったもの。
柳君はそういえば記念栞を使用していた。
図書館から借りた本はそれを使っているとかなんとか聞いた記憶がある。
しかし何故、柳君に?

「柳君、これ。柳君のですか?」

今度は自分の持っていた栞を渡す。

「ん?……あぁ、そうだ。柳生が持っていたとは」
「谷岡さんという方から。お婆様を助けてもらった方が落としたとかで。知りませんか?」
「いや、知らないな」
「そうですか」
「その人を探しているのか。悪いな。役にたてなくて。何か手伝えることはあるか」
「すいませんが……。ありがとうございます。気持ちだけ頂ますね」
「あぁ。課題、なのか」
「そうです。ですから自分の力でどうにかしたいので。では、図書館に行きしょう」

柳君の栞を真田君が何故買ったのか。
無くしたと話しても真田君が買う理由がわからない。
真田君は記念日などを特に何か祝うような人柄ではない。
せいぜい誕生日だが、柳君は初夏の生まれだったと記憶している。
なら。

「弦一郎に本を貸してな。それで無くしたから、お詫びにと。学校で配られて無料なのに、な。
 図書館から持っていても良かったがそう言うなら取るのも悪い」

聞きたかったのではないのか?と少しからかうような口調。
何もいわずとも察してくれるところが柳君の長所である。

「ええ。ありがとうございます」

昨日は誰にと聞かなかったから解らなかったが、今度会ったら聞いてみよう。

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