03


午後の放課後の時間帯に、図書室には殆ど人がいない。
受付に職員がいるだけで、机に突っ伏して昼寝を決め込んでいる二年生もいた。
確かにのどかな昼の日差しは集中力を吸い取って眠気を誘う。
受付のカウンターの横にある木製の小さなボックスに手を伸ばすと僅かに塵が。

「俺らの学年からは栞じゃなくて、シャーペンなんスよ」

切原君の言葉を思い出す。
最近は電子で本も読めるようになったし、そもそも本離れの世代だ。
仕方無いとしかいいようがないけれどもったいなくも思う。
本で得れる知識も多いし、紙ならではの匂いも味もある。
本は多く読んだほうがいいなんて爺臭いのだろうか。
栞は実は今でも配られているらしい。
先生達のしぶる気持ちを実に表しているの仁王君は笑っていたが。
意外にも彼は本はそれなりに読んでいるらしい。
その事を知っている人は少ない。
たぶん図書室によく通っている人でも知らない。
事実、私も仁王君に言われるまで気がつかなかった。
なぜ仁王君が知っているかと疑問には思ったが、仁王君は教えてくれなかった。
塵の積もった栞の束から手を離して図書室を後に。
落としたならここで持って行くかと思ったがそうでもなさそうだ。


帰宅途中、商店街の先で意外な人物を発見した。
黒い帽子をいつものように目深にかぶっている。
何やらキョロキョロと所在無さげに周りを伺っているのが彼らしくない。

「真田君」
「ん?……柳生か」
「いかがなされましたか?何か探し物でも?」
「あ……いや……」

どうも歯切れが悪い。

「そうだな……、柳生なら知っているかもしれん」
「はい?」
「あの、だな。栞を売っている店を知らないか?」

栞ときた。
これは偶然なのだろうか。

「一体どうしてですか?」
「本に挟まっていた栞を落としてしまったのだ」

心底困ったという様子で眉を下げている。

「わかりました。そういう事情でしたら協力させて下さい」
「助かる」

栞、か。
しかし立海の栞だったら図書室から持っていけばいいのに。

「真田君は、学校の記念栞が図書館にあるのを知っていますか」
「無論。それがどうしだ」
「いえ……では、案内しますね」

真田君と寄り道する日が来るなんてあるとは思いませんでした。
そうからかったら、真田君は本当だ、と帽子をさらに目深にかぶり直した。



|

戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -