08


部室の前に行くと、見知った顔が全員そろっていた。

「時間ぎりぎりやの。珍しい」

ニヤニヤしながら私の肩を叩く仁王君。
若干の白々しさを感じる。
解ってていうのだから質が悪いと思う。
しかしそんな仁王君の言動には慣れたもので、すいませんと軽く謝った。

「こう全員揃うのもなんだか久しぶりだね」
「そうか?そんな事ないだろぃ」
「事実だ。学校で会ってるからそんな気がしないだけだろう。
 最後のミーティングが二学期の最終日だったしな。三ヶ月と弱と言った所だ」

柳君の言うとうり、言われてみるとそうだ。
けれどそんな事を感じないのは、テニス部同士の仲の良さを良く表している。

「所で、何故部室の前にいたのですか?」
「時間指定があっただろ?
 それに扉を開けるのは柳生の役目だと、そう指示も書いてあったてな」

桑原君の説明に、なるほどと頷く。
宝探しのゴールテープを切るという意味だろう。
部室に入って、そこが最後。
宝物。
「差出人」の情報に違いない。
先陣をきるのは部長。
それは幸村君、または真田君がするものだったから少し緊張する。
見慣れた、しかし久しぶりの部室のドアを開ける。
と。

クラッカーが弾ける音で包まれた。
驚いて、室内を見ると飾り付けされている室内。

「先輩!今までありがとうございました!」

後輩達の声。
それから、レギュラー以外の同学年の部員達。
一体どういう事なのか。

「先輩達!」

この仕掛人である切原君が一歩前に歩みでた。

「先輩達は引退したけれど、それからも色々あって。
 部長の引き継ぎとか、お世話になってたッス。
 それでようやく落ち着いて来たから改めて先輩達にお礼をしようと小さいですが、パーティーを開く事にしました。
 どうぞ楽しんでいって下さい!」

切原君の言葉に真田君が感動して、大声で切原君の名前を呼んだのに苦笑した。



「セーンパイ、楽しんでますかー?」

ジュースを片手にした切原君が私の隣に座った。
後輩達が開いたパーティーも終わりに近づき、それぞれ思い思いにおしゃべりをしている所だ。
隣に座っていた仁王君が切原君が来た事で席を外す。
仁王君は聡い人だから、私が色々とかけずり回っていた理由に気がついているのかもしれない。

「はい、とても。ありがとうございます」
「なら、よかったです。それでですね、先輩。
 手紙っていうか宝探し?の話ですけど」
「あれは全て切原君が考えたわけではないのでしょう?」
「ッス。俺、和歌とか全然わかんなですもん。
 でも最初の。仁王先輩のやつ。
 『目指すは天上の夢』は俺が全国制覇への誓いみたいなもんですし。
 そーせきの『壁が三つ』は三強の事で、俺が壁になったのは俺が部長になったから。
 三人の代りに俺なりの頑張るってそんな意味を込めてたんですよ」
「ええ。そうだと思いました」
「で、えーと伝言は。
 委員会には入っている、です」

まぁ、だろうと思う。
可能性としては美化か図書委員会。それに風紀が上がっている。
それだけで大分しぼれる。
しかし考えてみれば今まで関係できた人は全て委員会に入っていると言える。
ただ可能性の肯定にしかならない。
不確定要素は潰してくれるけれど、新しい情報は貰えないとは。

「切原君はその差出人の方とはどうやって知合ったのですか?」

相手は先輩だ。
委員会に入っていない切原君は部活以外では先輩と話す機会はないだろうに。

「知り合いの紹介です」
「その知り合いは?」
「すいません、無理です。
 俺、遅刻が多いすから散々説教されて、頭あがん……っあ。
 失言っす!忘れて下さい!!」

わたわたと手を振って慌てている。
少ししっかりしてきたと思ってもまだまだこんな所の素直さは変わらない。

「その方には言わないであげますよ」
「助かります!えっとあとこれ!」

差し出された手紙。
今度は淡いグレーに、白いペンで書かれて「柳生比呂士様」と書かれてある。

「ありがとうございます。それで切原君。
 また差出人と会う機会はございますか?」

今回の仕掛けが無事に完了したと報告するはずだ。
そう思って尋ねると予想どうりに頷いた。

「なら、これを渡してもらえませんか?」

私は白の封筒を切原君に渡した。

「はい、渡しておきますね」
「宜しくお願いします」

どんな反応が返ってくるのか。
それが楽しみだ。


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