02


手紙をそっとたたんだ。
手紙を読むのは明日にしろと。
昨日、渡された封筒にそう書かれていた。
時間指定が必要という事はなんらかの仕掛けがあるという事。
宝探し。
それが今回のお題。
宝探しとい言い。
この手紙の「差出人」はお茶目な性格なのかもしれない。
そう勝手にあたりをつけてみる。
手紙の「差出人」探しもある意味では宝探しと同じ。
全く関係のないお題とは言えない。
裏でこっそりと笑っているのならば。
これはますます探し出さなければいけない。
楽しんで、楽しまされて。
そんな事をする「差出人」には是非とも、お会いしたい。
幸い、と言うか。
朝礼まで十二分に時間はある。
このお題を解く時間はあると言うもの。
改めて、問題を見直す。

銀色は見上げてる
橋がかかるのを待っている
目指すは天上の夢

暗示とある以上はなぞなぞと言うより連想の方が正しい。
銀色。シルバー。金属だろうか。
でも見上げていると言うなら。
生き物、人、もしくは人形の何かと考えても差し支えはない。
身近にいる銀を持つ存在。
それは仁王君。
仁王君が見上げる場所。
すなわち屋上。

さて、行ってみようではないか。
宝物探しの旅へ。


屋上への扉を開けると朝の新鮮で清らかな風が身を包む。
寒かろうと上着を着てきて正解みたいだ。
朝は濁っていない分風も研ぎすまされている。
そして屋上には意外にも先客が。
こんな朝早くに、珍しい。

「お早うございます、仁王君」

寝っ転がっている仁王君はふわりとあくびをしながら起き上がった。
風で縛ってある髪が揺れる。

「おはようさん。珍しの、屋上に来るなんて」
「そちらこそ、こんな早い時間から屋上にいらっしゃっているなんて。
 いつもこのぐらい早いと、いいのですけれどね」
「あぁやだ、やだ。朝っぱらから柳生のお小言なんて勘弁なり」

心底嫌だと言わんばかりに顔をしかめられる。
言われたくないのならば、言われないように行動すればいいのに。
そうとは言っても理解しながら仁王君は行動を改めはしないのだろう。
風紀委員としてみれば困ったもの。
その困ったさんな所が嫌いにはなれないのだけれど。
もっと言えば。
そんな所が仁王君の悪くも、良い所で、私が一番好きな所なのだけれど。
鏡さながら正反対だからこそ、仲がいいのだから。

「赤也にせがまれて朝練に顔出ししたんじゃけどな。
 早々に退場したなり。いつまで居たってしかたあるまいし」
「切原君はレギュラー唯一の2年生でしたから、寂しさも一塩なのでしょう」

仁王君と丸井君と共に悪戯してよく真田君に叱られて。
そんなふうに、特に仲がよろしかったから。

「私は、少し探し物がありまして」
「手伝おうか?」
「自分の手で見つけたいですしね」

そか、と再び寝転ぶ仁王君。
私もその宝物を探すためにぐるりと歩き出す。
見上げているのは空だから、そこに隠すなんて不可能。
だから最初の行はただ場所を示している事になるだろう。

橋がかかるのを待っている。
目指すは天上の夢。

橋。比喩?
目指す、のだから橋にあたいする物から一番高い所にある、と言う事だろうか。

「柳生、探し物は、高い所から見た方が見つかりやすいぜよ?」
「何故、そんな事をおっしゃるのです?」
「柳生がめったに屋上に来ないのに落とし物があるとは思えん。
 つまりなんらかの人為的な事があるはずなり。
 なら普通な所にはない。ただ普通にさがしても無理なら、視点を変えるまでよ」
「なるほど。しかし高い所とおしゃっても、どこからですか?」
「給水タンクの上」
「そんな所にどうやって行くのですか。だいいち、タンクの上みたいな危険な場所に」
「はいはい。お説教はいいぜよ。で、行き方なんだが。
 タンクの横に梯子があるんよ。それを使えば」

梯子!確かに、橋と言ってもいいかもしれない。
仁王君に礼をいい、タンクの上を見ると。

「……ありました」

風で飛ばされないように、セロハンテープで手紙が貼付けてある。
しかも、実に鮮やかな原色の青の手紙。
破かないように剥がして封筒を見ると、宛先は仁王君へと書かれていて。
と言う事は仁王君がここに居る事はお見通しだったのかもしれない。
降りて、手紙を仁王君に差し出すと不審そうな顔をして手紙を読み始める。
するとたちまち面白い悪戯を思いついたような笑顔を浮かべた。

「ほい、これ柳生」

二枚あった内の一枚を手紙を差し出されたのだけれど。
人のなのにいいのかと思ったが内容を見て納得。
次の指示が書いてあったのだから。

「さて、朝礼も始まる事やし。戻るぞ柳生」
「……ですね」

続きは昼休に、か。
その間に謎を解こうじゃないか。


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