06


無事に誕生日会を終えたその翌日。
丸井君に声をかけられ昼、購買に足を運んだ。
普段お弁当を持ってくるのでこのような場所に足を運ぶのは久方ぶりだ。
寒さにも負けない活気の良さに微笑ましさを感じた。

「お、柳生、ナイスタイミング」

ちょうど丸井君の買い物を終えた所だったのだろう。
人との波を器用に縫いながらやってくる彼は嬉しそうである。

「すーぐ売り切れちゃう奴が今日は買えてな。ラッキーだったぜ」
「それは良かったですね。して用とは?」
「これこれ」

袋を手渡される。
持った所たいした重さではない。
むしろ軽い位である。

「ケーキ。昨日の礼だ」
「そんな、お礼だなんて」

丸井君の事だ。
恐らくは手作りなのだろう。
わざわざあのぐらいの事でお礼なんていらないのに。

「そういうと思って大翔に作ったのを持って来たんだ。
 余り物で悪いけどな」
「いえ、そんな事ないです。ではありがたく頂きますね」

悪いと思いつつも、しかし無下に断るのも悪いと言うものだ。
気を使わないようにここまでして下さったのだし。

「本当は教室で渡したかったんだけどさ。
 柳生、人ごみは苦手だろぃ」
「好きとは言えませんね」

けたたましい程の音楽がする場所は流石に遠慮申し上げたいが。
全く駄目という程でもない。
しかし静かな環境の方が好きであるのは事実である。

「けど、まぁ、そういう指定だしな」
「それはいったいどういう意味で」
「こっちの話」

クツリと笑う中でどうも見守るような、と言うべきなのだろうか。
そのような感情が見え隠れするのに疑問を感じずにはいられない。
いったい何だろうか。
しかし丸井君は言う気はない様子なので深くは追及はしまい。
他にも渡すものがあるんだ、と言った丸井君。
それから渡されたのは封筒である。
それは実に鮮やかな原色の青である。

「同学年の女子だったぜ」

探し人、と付け加えた事で理解する。
「差出人」の情報と言う事か。
つまり、そういうシステムなのか。
手紙でなんらかの指示を出す。
それをクリアすると情報が手に入る。
これで意味を与えているのだろう。
これを受け取った。
その時には手紙の「差出人」当てというゲームに乗ったとみなしていい。
だからこれからいかなる意味が解らない指示を与えても。
情報を与えるという事を餌の為に断ると言う退路を立つ。
同時に良くわからない手紙に存在意義を明確に示している。

全くもって、手強い。

「でもよ、色がかぶるって大変だよな」
「丸井君……。私にわかるように話して下さい」
「読めばわかる」
「はぁ」

曖昧に頷いてしまう。
丸井君がわかっているのに、私がわからないというもどかしい。

「この手紙を丸井君が持っていると言う事は、手紙の差出人は」
「あぁ、知ってるぜ。けどこれはシーックレットで奴で」
「そうでしょうね」
「それに持ちつ持たれつって感じだしよぃ」
「それも、わかります」

手紙を渡す代わりに悩みを解決する手助けをした。
そう言う事なのだろう。
そういう仕組みにすると言う事は合理主義なのかもしれない。


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