01


大学からの帰り道。
私はいつもと変わらない道を歩いていた。
しとしとと雨が降り、道はカラフルな傘で彩られている。

「……ん?」

ふと、小さく猫の鳴き声が耳に入る。
横を向くと三毛の子猫が路地裏にちょこんと置物みたいに座っていた。
首輪がないから野良猫か。

「君も、一人なのに頑張ってるんだね」

私もだよ、なんて小さく笑ってみせた。
かがみ込んで手を伸ばすと喉を鳴らし甘えてくる。
……可愛い。

私には両親がいない。
物心ついた時にはもういなかった。
親戚の家に引き取られはしたものの、伯父さんも伯母さんもいい人なのになんとなく居づらさを感じていた。
だから今は一人暮らしをしている。
バイトをして、国から援助金をもらって大学へ。
気の合う友達とかもいる。

「頑張れ」

私も頑張ってる。
君も頑張って。

いつまでも道草を食っているわけにもいかない。
レポートもあるし、夕食も作らなくては。
再び立ち上がり歩きだす。
それを子猫がついてくる。

「駄目だよ。私の家はマンションだから君は飼えない」

そう、振り返って言った。
だから反応が遅れた。
大きなクラクションの音。
次に浮遊間。

あぁ、車にはね飛ばされたんだ。

そう認識して、地面に叩き付けられた所で私の意識はブラックアウトした。



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