01


渡瀬先輩は最後に爆弾を置いて去って行った。
弦兄に告白して去って行ったのだ。
弦兄はフッたらしいのだが。
そんなこんなでなんだかわだかまりを感じたままの転校だと思っている人もいる。
責任を感じてる面もある。
けれどそれは時間が解決すること。
私が手を出す事でもない。
それより何も無い平和な日常が訪れた事が私にとっては大切な事。

思えば一番平和な時間だったと思う。

弦兄との再会。
ハルとの和解。
渡瀬先輩の問題。

私の身の回りに問題が何も無いと事は弦兄と別れ離れになって以来始めてだ。

それがつかぬ間のもだと理解していても。
理解しているからこそこの時間が愛おしい。

「ふぁ……」
「寒くない?」
「んー」

眠いのか返事が曖昧なハル。

「そういえば仁王君、また午後の授業をさぼりましたね」
「ピヨ」
「ハルは音楽の教師が嫌いだよね。
 でも結局来年も同じだよ?」
「まー、俺も個人的には嫌いだな。アレ絶対カツラだぜぃ。
 今度天才的にカツラをとってやるぜ、ジャッカルが!」
「俺かよ!」
「お、その証拠写真、俺に下さいね!」
「おう、良いぜ!」

お、弦兄の全力疾走。
これ慣れてないと意外と怖い。
なんせ、あの顔だし。
走る早さも半端ないし。

「そこ!さぼってないで練習せんかーー!」
「手は動いてるなり」
「足も動かせ!」
「立ってるだけですでに力は働いてるよ、弦兄」
「へりくつ言うな!たっく変なとこばかり仁王に似おって!」
「さーなだぁー!寒くてしにそうじゃ。
 だから練習は無理ぜよ」
「体を動かせば問題ないだろう!赤也を見習え!」

遠くをみると、寒い寒い連発して走り回る赤也。
なのになんで半袖なんだろう。

「真田君、私はやるべき事はやったのに失礼ですよ!」
「す、すまん」

弦兄もちょっと苦労性だよね。
真面目は人はこういう時、苦労する。
私は、一歩は離れた所で観戦。
楽しませてもらっています。



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