01


なんだかんだの内に渡瀬先輩のいじめはさらにエスカレートして。
ブン太先輩とかが怒っているのをボーと見ていた。
先輩が必死にどうにかしようとするのがどこか滑稽にしか感じられない。
駄目だ。最近なんか堕落してきた。
いやな傾向だ。
物理的な何かを求められるのはいい。
気持ちも言葉で和らげる事もできよう。
憂いを取り除く事も。
でも、掛け値無しの私だけの気持ちを求められる恋愛事は苦手。
それが周りに渦巻いてるから麻痺してるのだ、きっと。
ファンクラブもようするにそう言う事だから。

「と、思うんですけど」
「それを俺に相談されてもね」

ふわりと笑う精市先輩。

「彼女達を押さえるのは俺の役目じゃなくて礼奈」
「でも基本的には古賀先輩は手を出さないじゃないですか」
「今の所、皆は奔走してるだけで特に何もないからあいつも何もしないんだよ。
 恋愛事は最終的に気づくのは自分でじゃなきゃね」
「そうですかね?またっく、最近回りが色気づいて嫌になります。
 中学で惚れた腫れただの早い気がします。早く恋愛したって長く続くカップルは少ないでしょう。
 なら傷つくだけのきがします」
「ちょっと爺臭いね。弦一郎かって、兄妹だったか。
 そんな所は似るんだね。弦一郎よりは現実的というか淡白な考えだけど」
「弦兄はウブですからね」
「本当、面白いよね」

ちらり、と窓の下を見るといじめられる先輩の姿。
いじめてる側も、静観してる私達もお互い悪趣味だな。
お、蓮二先輩にブン太先輩、ジャッカル先輩だ。
逆切れしてるよ、彼女達。
ようやる。
おー、お?おお?

「っ!」

先輩をいじめるように使ってたカッターを取り上げようとしたジャッカル先輩。
しかし抵抗されて手を怪我した。

「精市先輩!?」

精市先輩が窓から飛び降りた。
二階だから怪我はしないだろうが。

「あーあ、やっちゃったなこりゃ」

私が怒る暇はなさそうだ。
他人事みたいにつぶやいて、踵を返した。
救急箱を借りる為だ。
保健室でハルが昼寝してたから共に現場に行くと青ざめてる女達がいた。
真冬なみに空気が冷たい。
まぁ、確実とも言え最悪の手段だけどこれで解決するか。
なんと言うかあっさりだな。

「ジャッカル先輩」

手を取って治療をする。

「すまねぇ」
「いいえ。怪我、しちゃ駄目ですよ」
「呼び起こしたらいけないものを呼び起こすからの」
「幸村君、本気で怒ってるからな……」
「精市が本気で怒るのは中一の時以来だから六百五十七日ぶりだな」
「あぁ、あれかよぃ。一年でレギュラーになったお前らをいびった奴か。
 その後先輩達が数日登校しなかったもんな」

そんな事があったのか。

「それより渡瀬が……」

ジャッカル先輩の視線の先にいる渡瀬先輩。
精市先輩とジャッカル先輩の間を視線を行き来させておろおろしている。
おろおろしている場合じゃないだろ。

「ああ、それと渡瀬さん、マネを止めてくれないかな。
 このぐらいで何もできない人は王者にいらないし、マネなのになんで選手に怪我を負わせてるの?」

ああ、やっぱり。

「……、皆さん行きましょう」
「え、でも幸村君が」
「このまま幸村の怒りを見てるつもりか?幸村の怒りは目に毒だと思うがの」

関わらないほうがいい、今は。
こんなの精市先輩も見ていて欲しくないしフォローは後でできる。

「そうだ、な」

そっと私達はその場を離れた。



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