05
なんで、と呟いたのを私の言葉を無視してゆっくり近づいてきて髪にそっと触れる。
「髪、短かくなったの。長いのも好きじゃったが、それもよう似合う」
触られた時に思わずビクリ、と反応してしまって。
しまったとは思わずにいられなかった。
でも仁王先輩は苦笑いするだけで。
「俺も幸村に用事がある言われたん。
じゃが、アレだな。
俺達の為じゃな」
騙された、と思うけど。
たいして怒る気にもなれなかった。
話し合いの場を設けるなんて言ってたからたぶん、これ。
「仲直りしようとは、言えんな」
「え……?」
「俺が勝手に怒っとっただけだしの。
喧嘩も何もないじゃろ。
舞、悪かった。
こんな俺じゃけど傍にいてくれんかの?
俺には、お前さんが必要ナリ」
ずるい。
長くいるせいで私の望む言葉を知っていてなんのためらいも無く使うから。
こんなこと言われて私が断れるわけ無いのに。
ハルは本当に詐欺師だ。
狡くて。
狡猾で。
でも本当は繊細で優しい詐欺師。
「ハル」
ずっと、使わなかったハルの呼び方。
やっぱり一番しっくりくる。
「なん?」
「ハルの、馬鹿」
「まったくじゃ」
ハハッと乾いた笑い声をハルはあげた。
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