03


鋭い痛みに一瞬何が起きたのか判らなかったが弦兄に鉄拳制裁を喰らったみたいで。
私を見る弦兄は見ているこっちが竦んでしまうほどビリビリとした雰囲気を纏っていた。

「この、大馬鹿者!!!」

たぶん、皆は私がその場で自殺するんじゃないかって勘違いしているんだと思う。

「やっと会えたのにお前は今度は永遠に俺の前から消えるつもりか!?」
「そんな事」
「あるだろう!!今、お前を苦しめている全ての原因を俺は知らない!
 それでも傍にいてやるくらいはできる。
 もう少し、俺達の事を信用してくれてもいいだろう……?」

信用してないわけではない。
弦兄達は強くて、弱い私にはその強さに甘える事ができないだけ。

「でも」
「そんなにうだうだ言うなら一回死んじゃえよ」

精市先輩がカッターをも持って私と視線を合わせるためにしゃがみ込む。

「お、おい、幸村!」
「ジャッカルは黙ってろよ。
 ほら、地獄を巡っておいで」

ザクッ

周りの息を飲む声。

「よし、これで一回死んだって事で」
「髪……」

精市先輩は私の結んでいる髪の片方を切ったのだ。
そのせいでゴムは外れ片方だけショートカットという歪な髪型になってしまった。

「いい?舞は優しすぎるから、なんでも思い詰めやすいんだ。
 悪い癖だよ。これですっきりしただろう?
 これからは何でも俺達に言う事!部長命令だからね」

皆の肯定する声。

「私なんかじゃなくて、皆が優しすぎるんですよ……」
「仲間を大切にしない人なんていませんよ」
「おっし、新生舞になったんだ!眼鏡も外せ」

赤也君に眼鏡を奪われる。

「何だ、舞は視力はいいのか?」
「めちゃくちゃ良いっすよ、柳先輩」
「ふむ。データだ」

私の事なのに勝手に話が進んで行くのは何故でしょう?

「じゃあ、髪を整えなきゃね。ジャッカルが!」
「俺かよ!」
「お前以外に誰がいるんだよ。と言うか新生舞ってネーミングセンス最悪だよね」
「ひでぇッスよ、部長!」
「たるんでるぞ、赤也!」
「いきなりすぎるだろぃ。すぐそれに繋げるなよ」
「む?」
「黙れよ、デブン太。たるんでるのはお前のお腹だろ」
「……!!」
「ハハハハハハ!!何やってるのブン太。そんなに落ち込むなら今から外周行ってみようか」
「嫌だ!」

「……フフ」

何、この会話。
収集つかなすぎ。

「ようやく笑ったね」
「え?」
「まったく、心配かけすぎだよ」
「あ……、すいません」
「謝る必要なんてありませんよ」
「そうそう」
「お前は、俺達の大切な仲間なんだから」
「はい……」

テニス部員の皆が私の中で大切な存在になった瞬間だった。



戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -