02


幸村精市side

練習中に何となく嫌な予感がした。

俺は基本的に勘は良い方だから得体の知れない不安感に周囲に視線を走らせる。
全員いつものように練習している。
ああ、舞がいない。

どこだ?

部室の窓から、彼女の姿が見えた瞬間。
部室に一番近い赤也の名前を怒鳴ると同時に走り出す。

虚ろな瞳でカッターを出し入れする舞は今にも自殺してもおかしくなさそうで。
叫ばれた赤也は一瞬、何故呼ばれたか解らなかったらしく驚いた顔でこちらを見る。

「部室だ!」

それで視線をそっちに受けた赤也は事情を察して走り出した。
それと同時に他のレギュラー陣も。

「幸村」

仁王が隣にきていて、情けない顔をしている。
普段感情を見せないのに舞の事になると解りやすい。
それだけ大切な存在なはずなのに。

「お前は入るな。何で舞がこうなっているのか解るだろう。
 お前に今、部室に入る権利はない」
「……わかった」

部室内に入ったら赤也が舞の胸ぐらを掴んでいた。

「お前!!今をしようとしてた!?」

部室内に入ったレギュラー全員、変わりなく険しい顔をしていて。
俺も、そう。

「あかや、君……?」
「お前は何でいつもそうなんだ!」
「切原君、気持ちは解りますが止めたまえ」

柳生が制止の声を入れる。
冷静に言っているが怒っているのが解る。
ゆるゆると胸ぐらを離すと舞はぺたんと床に座り込む。

「舞」

俺が声をかけると静かに俺の方を見上げる。
変わらず、虚ろな瞳で。
始めてはった時はもっと、いっそ危うげなぐらいますっぐな瞳をしていたのに。

「舞はいつも考えすぎる。頼る事を知らない」
「……」

僅かに唇だけ動かされたが声にならない返答が返ってくる。

「お前の中で俺達は何?」
「……わからない」
「何を考えてそんな事になった?」

返答なし。

「迷惑をかけていっそ消えてしまいたいと思っている確立100%」
「人が生きていて迷惑かねない事なんてないだろぃ。
 でも、お互い迷惑かけあって助け合っていくもんだろ」
「それでも、私は……」

パァン――

乾いた音が部室に響きわたった。




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