05
数分後、跡部さんと綾菜が部屋に入ってきた。
「舞!!」
綾菜が飛びついてくる。
その目に僅かに涙を溜めて。
「綾菜が泣くなんて似合わないよ」
「だって、きっと私か景吾のせい」
「違うよ」
笑顔を作っていうと複雑そうな顔をされて私を離す。
「無表情な舞がこんな時に笑うなんて嘘に決まってるじゃない」
「違うのは本当」
だって原因はもっともっと前の事なのだから。
「大丈夫か、真田」
「舞でいいですよ、跡部さん。弦兄とかぶりますから」
「そうか。気分はどうだ?」
「平気です。すいません、弦兄を呼んだは跡部さんでしょう?」
「いや、構わねぇ。それよりさっさと帰って休んでろ。車を出してやるから」
「いえ、自分たちで帰れますから。ね、弦兄」
「ああ。これ以上世話になるわけにはいかない。
舞も大丈夫みたいだしな」
「だが」
「歩いて帰りたい気分なんですよ」
「……そうか」
帰り、私と弦兄は手を繋いで帰ってた。
「恋人みたいに見えるかな?」
「見えないだろう」
「懐かしいね。昔もこうやって一緒に帰った」
「そうだな」
「何も言えなくてごめんなさい」
「いい。俺は舞の事を信用している。
何があったかは、知らなくてもこれからを共に築く事はできる。
だから、いいんだ」
「弦兄は強いね」
「お前は優しい奴だ」
夕日が私達を照らし出す。
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