06


あれから、赤也君の家にお礼を言いに行ったりと慌ただしい日々を送った。
数日学校を休む事になったりした。
赤也君は私の事情をしってまるでドラマみたいだと言っていた。
現実は小説より奇なりっていうしね。

私は大分、心が安定はしてきた。
底辺には変わらないけどこれ以上の決壊は無いと思う。
仁王君に求めてたものを弦兄に変えた。
なら、元に戻るかと思ったけどそれは敵わなかった。
やっぱり私の中で『ハル』は特別なんだと思う。
その特別がどんなのかは解らないけれど。

「舞はマネだったのか」

柳先輩が口を開く。
私の事を心配して訪ねに来てくれたのだ。
それに精市先輩、柳生先輩に赤也君も。

「弦兄の事があったから表立ってしんかったんです」
「だから名字を名乗らなかったのですね」
「はい」
「あの練習メニューのできは良かった。助かっている」
「役に立ててよかったです」
「ん〜、じゃあもういいんじゃない?」

精市先輩が口をはさむ。
相変わらずいきなりな人だな。

「良いとはなんだ、精市」
「表立ってもさ。面倒だから公表しちゃえ」
「何故もう既に命令系なのだ」
「だまれよ、弦一郎」
「しかしだな」
「黙れ」

おお、黙った。
赤也君が怯えてるよ。

「精市先輩……」
「きっかけ、できるでしょ?」
「何の事っスか?」
「今はまだ教えないよ。ね、どう?」
「そうですね。理由が無くなったのに我がままを言うわけにはいきませんし。
 改めてよろしくお願いします」

頭を下げるとみんなもよろしくと言ってくれて。
きっかけなんて与えられても困るけれど。
けれど精市先輩がそういうのなら。
努力はしなければならないのだろうと思いながら。



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