03


弦兄……。
弦兄の隣にいる柳先輩、正座している赤也君は私が渡瀬先輩と共にいる事に驚いている。
精市先輩は、ニコニコしてるだけで何も反応しない。

「真田君。真田君に小さい頃に誘拐された妹さんがいるでしょ?」
「……!!なんで、渡瀬がその事を!」
「本当か、弦一郎。初耳だな」
「ああ、蓮二。人に話した事はないからな。
 もしかして渡瀬。その連れている女子が舞、なのか」
「うん。ほら、舞ちゃん」

ぐいと、弦兄の前に立たされる。

「弦にぃ…」
「舞、よかった。無事で」

ぎゅうと、抱きしめられる。
人の体温が心地いい。
久しぶりな感覚。

「弦兄は私を覚えてて、ずっと探していてくれたの?」
「当然だろう。俺の妹なんだ。忘れるわけなかろう」

私、求められている?

「弦兄、もう離ればなれにならないよね」
「ああ」
「私の事、必要?」
「必要だ」

色が少しだけ戻ってきた。

お願いです。
私を傍に置いておいてください。
そうしなければ、私は生きて行けません。
そのためならば、私は何でもしますから。

「渡瀬、感謝する」
「あ、ううん!私は何もしてないから!」

ぶんぶんと頭をふる渡瀬先輩。
私も弦兄から離れ、頭を下げる。

「ありがとうございます」
「よかったね、舞ちゃん」
「はい」

急に、叫び声が響き渡った。

「は?はぁぁぁぁあああ!?」
「赤也、五月蝿いよ。折角の感動の再会に水を差すの?」
「うおぉお!?すいません、部長!」
「ふむ、データだ」
「弦一郎、今日は帰ってもいいよ」
「すまない、精市」

帰ろう。そう手を差し出す弦兄の手を強く握った。



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