02
後ろでこそこそと話し出す氷帝の方々。
聞こえてますよー。
「跡部。マネは他にいたやろう?せやのに、このお嬢さんもマネって立海はマネが二人もいるんか?」
「あ〜ん?俺様が知ってるかよ。知りたきゃ、あれに聞きやがれ」
「わ〜。跡部、さっきのまだ根に持ってるC〜」
「うるせえ!お前はなんでこんな時だけ起きてんだよ!」
「丸井君がいるからテンションがマックスなんだC!」
「ちっ……」
「激ダサだな、跡部」
会話が笑える。
毎日こんな会話を繰り返しているのか、この人達は。
立海もギャグになるキャラはいるけど。
「私、極秘と言うかあまり表立ってマネしてないので」
聞かれてたのかとバツの悪そうにする人、答えてくれた事にびっくりする人。
様々な反応を返してくれる。本当に個性的な人達。
「表だってて……どういう意味なん?」
「そのままですよ。テニス部員の一部だけしか私がマネだと知らないので。
だから私が案内したのは秘密ですよ?」
「だったらお前はどんな仕事をしてるんだ?」
「教える義理はないですよ。猿山の大将さん」
後ろで再び爆笑する声。
急にぐいっと引っ張られて後ろを向かされる。
そして目の前には跡部さんの顔が。
綺麗な、吸い込まれるような蒼い瞳と視線が合う。
跡部さんは眉間に皺がよっているがそれでも美形だなーとは思う。
美人は怒ると迫力があるな。
「お前、さっきから失礼だと思わないのか?」
「お気に障ったのなら謝ります」
じっと見つめ合う事数秒。
すると何故かフッと笑われた。
やっぱりキングとしての余裕ってやつかな?器がでかいこと。
「気が強い女は嫌いじゃねえ」
「どうも」
「フッ、ますます俺好みの反応だな」
あ、顔が近づいてきた。
もしかしてもしかしなくともキスされる?
こういう時って抵抗すべきなのだろうか。
いかんな。こういう感覚は鈍いんだよね。
あと少しでキスされるという所で後ろに引っ張られ誰かに抱きしめられる。
「なにしてるんじゃ……跡部」
この声、ハルだ。
しかも怒ってる気がする。
声が心なし低い。
「仁王か……。お前、こいつの知り合いか」
「おまんには関係ない事じゃ」
「ああ、そういう事か。醜いな」
「節操無しに言われたくないなり」
話が見えない。
というか私の頭の上で火花を飛ばさないで下さい。
「舞」
こっそりと耳元で言われる。
「なに?」
「他には何もされてなか?」
「うん」
「そか。……おい跡部。此処から先は俺が案内しちゃる」
私を放してさっさと先を歩いて行く。
「頑張れよ、もう一人のマネ」
「どうも?」
何を頑張るのですか、宍戸さん。
ハルの機嫌を直す事か。
仕方無いな、みたいな雰囲気を出しているR陣達は肩をすくめてハルの後をくっついて行く。
「また今度会った時が楽しみだな」
かっこ良く去って行く跡部さん。
「遠慮申し上げておきます」
ハルの機嫌が悪くなるじゃないか。
それに私は逆ハーは目指してないし。
それは渡瀬先輩でやって下さい。
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