08


幸村精市は私の真っ直ぐに見てこう言った。

「だから、君は凄く優しい」

意外、だ。
この人からこんな事を言われるなんて。
内面を知りつつも言うなんて。
そんな事を言われるのは十数年振りぐらいだ。
私は身内に他人を排除しているのを見せない。
気づいてるかもしれないけど何も言ってこないし。
私は私自身は全然優しく何か無いと思ってる。
そんな事を言った事があるのは、この人の他にはあの人達ぐらいだ。
前世の私の大切な身内で親友達。

「あー、もう貴方最悪です。こんなにぐいぐい私の中に入ってきた人は始めてです」
「光栄だな。俺は君の事が気に入ったからね」

私の頭を撫でる幸村先輩。
最近撫でられるの多いな。
柳先輩もよく撫でてくるし。
きっと、幸村先輩は時間の問題だ。

「名前を教えて?」
「舞です、幸村先輩」

貴方はまだ私の名字を知るのには早い。

「名前で呼んでよ」
「え」
「呼んで」

おおう、黒い。
黒いですよー。

「精市、先輩?」
「よし」

……いい笑顔だよ。

「ねえ蓮二に聞いたけどトレーナーの才能あるらしいよね。マネにならない?」
「お断りします」
「そう、残念だな」

全然諦めたように見えませんよ、この人。
そして柳先輩、何を言ってる。
いや、この人に逆らえというのも可哀想か。
ま、いいだろう。
彼と繋がりを持つにはお互いに利益があるだろうし。
それに私は他人に流されてる人生だし気にはしない。

「あともうちょっとで夏ですね」
「そうだね」

今年の夏も暑くなりそうだ。



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