07


幸村精市の登場で女達は助かったと思ってるようだけど、愚かだな。
この人、笑ってるけど見下してるし。
気づかないのかな。
ああ、無理か。
馬鹿だし。

「幸村さ」
「言っときますけれどこの子が言ってる事は間違ってませんよ?うざいです、消えて下さい」

にっこり黒い笑顔。
女達は小さく悲鳴を上げて去って行った。
雑魚敵なイメージしかわかないな、あの人達。

「ふふ、久しぶりだね」
「やっぱり判りますか」

泣いた時の事。変装はしてるけどこの程度でこの人は騙せないみたいだ。
見た目は儚い感じなのに秘めてる力は計り知れない。

「今回も泣くかなーなんて思ったけど、あれ笑いこらえてただけでしょ」
「あれは笑う所ですよ」
「だろうね。君は他人になんて言われても何も思わない人種だろうから」

まっすぐ見る目は全て見透かすように澄んでいる。
しかも私と彼の場合、近いものがあるからなおさら。
こうちょっと対峙するだけで判ってしまう。

「自分の大切な人以外はどうでもいい」
「そう、私は大切な身内を傷つける人は徹底的に排除します」

あの女達はハルの事を馬鹿にした。
普段ならこの程度なら無視できるが以前からハルはミーハーを心良く思ってないみたいだ。
なのにあんな事を言うのは許せない。

「たとえ殺しても良心は痛まないだろうね」
「殺しませんよ。そんな事をしたら悲しむでしょ?」

誰になんと思われようが気にしないが身内の人が悲しむ事だけはしない。
逆にそれを取り除くならどんな残虐で、残忍な事でもする。
それが私の行動原理。

例えば。
誘拐された時、抵抗しなかったのは原作の事。
幸村精市が死ぬ事なんて別にどうでもいい。
けど弦兄は彼と親しくなるからきっと悲しむ。
だから彼が死ぬ可能性を減らしたかった。
目の前で死ぬのと生きてると思える可能性があるのならどっちが悲しむか。
比べる必要はない。
そんな傲慢で利己主義な考えをするのだ、私は。

「だからこそ他人の言葉に対して抵抗しないで流されるまま。
 それに自分に善良である事を強いてる面もあるよね。
 他人に対して冷酷になれるのに優しくするから不思議な感じがするんだよ。
 そして君の内側に入れる事はとても魅力的だから惹かれる」
「初対面でもそこまで言われたのは始めてです。
 でも幸村先輩も同じでしょう?」
「君程じゃないよ」

優しく笑う幸村先輩。
私は多分この人を嫌いになれないと思う。
身内にはまだならないけど。
今の所は、百合さん、ハル、弦兄に両親。
それだけだ。



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