06
馬鹿は挑発するに限る。
てことで。
「何か御用ですか?」
「そんな事も判らないのかしら?」
「すいません、馬鹿なので」
少なくてもこの人達よりはいいと思うけど。
「簡単よ。貴方、最近テニス部の皆様方と結構話してるでしょ」
「迷惑なの。いい?テニス部員は私達のアイドル。
ファンクラブでもない貴方が近づいていい方々じゃないのよ」
「だから今後一切彼らに近づかないで。いいこと?これは警告よ」
ぎゃーぎゃーとまくしたてる彼女達、基ファンクラブ会員達。
理由が凄い。
アイドル並に顔はいいのは認めるけど。
と言うか。
ファンクラブではない人がクラスメイトとしてそれなりに話していてもこの人達は認めないのだろうか。
しかも敬語って……!
ハル達年下なのに!!
爆笑しそうなのをこらえている為に俯くが肩が震えているのが自分でもわかる。
あ、でも怯えてると思われてるな。
こうした方が早く終わるかも。
じゃあそれに上乗せして。
「私……そ、そんな事、言わ……れて、も」
ツラッ!
笑いこらえながら話すのがこんなに難しいとは。
演技しなくても声が震えるし。
うーん、目薬でも持ってくれば良かったかも。
「泣きそうになってもなんとも思わないわよ。
だいたいテニス部の皆様も迷惑に思ってるのに気づかないの!?」
「そうそう、例えば柳生様はお優しいからお声をかけて下さってるのに気づきなさいよ」
様!
まさかの様呼び!!
「それに仁王様だって。
何時も屋上にいらっしゃる一人の時間を邪魔されて本心は嫌がってるのよ。
あんたみたいな女につきまとわれて何もおっしゃらないなんて理解できないわ」
あれ?
見られてたか。
ま、いいけどね。
見られるのはどうでもいい。それよりも大切な事がある。
「ハ……仁王先輩が迷惑に思ってる?あんた達、いい加減にしなさいよ」
こんな奴らに敬語なんていらない。
急に泣きそうな私が強気にしかも冷たい声を出したからか驚いてる。
心なし青ざめてるし。
私、前世の友人達にこの声は死ぬ程怖いと言う保証済みがあるんだよね。
「よく知りもしないのに勝手に人の気持ちを決めつけないで。
仁王先輩はあんた達なんてなんとも思ってないの。ミーハー女なんてね。
勝手にキャーキャー騒いでそっちのほうがよっぽど迷惑なのに気づかない?」
今、すごく冷めた目をしてると思う。
感情のこもらない、冷酷な。
貴方達は一番やってはいけない事をやった。
目の前の女達が涙で目が潤んでいる。
「今度は貴方達が泣きそうだね」
クスリと、笑う。
目は笑ってない。
ガタガタと震えてる。いい気味。
次の言葉を発っそうとした時、第三者の声に遮られた。
「はい、そこまでだよ」
現れたのは神の子、幸村精市であった。
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