05


あの時以来、柳生先輩とお話する機会が増えた。
といっても図書室で柳生先輩が本を借りに来た時に少しだけど。
それに柳先輩も図書室での遭遇率が高い。
ハルは意外な事に自ら私の元に来ない。屋上で会うぐらい。
テニス部員に関わりながらも平和な日常を送っている。
いや、送っていた。

「今日は朝から夜だった
 生まれたばかりのばあさんが
 水のない池に落っこちた
 手の人が助け出し
 足のない人が駆けつける
 南の南の北極で
 正義の味方の悪漢が
 白い黒馬にまたがって
 前に前にバックする」
「……なんだよ舞、そのへんてこりんな歌」
「歌遊びだよ。ほら、赤也君は英語やりなよ」
「うーー」

唸る赤也君。
今の歌はハルが歌っていたのを覚えてしまった奴だ。
ハルって、唐突に歌い出してしかも変な歌なのに妙に耳に残るというものばっか歌う。
しかもかなり色々なバリエーションがある。
これの「白い黒馬にのって前へ前へバックする」はハルの座右の銘。
意味はまったく不明。

「期末あと二週間しかないじゃない。頑張らないと例の先輩達が怖いんでしょ」
「でもわかんねーもんはわかんねーよ。クソっ、英語なんて滅びろ」
「無理だから」

最近何故か赤也君の教育係?なる物をさせられている。
だから先生、職務怠慢ですってば。
中間の再試の手伝いをしたせいか。
あれは先輩達への恐怖の賜物なのに。
ちらりと教室にある時計を見る。
三時二十五分。
ふむ、そろそろか。
手で玩んでいたシャーペンわきちんと握り直し問題の横にチェックマークを付ける。

「私、用事があるから印付けた所の例文を覚えておいてね。後でテストするから」
「うげっ」

文句を言いながらもやる所、素直ないい子なんだよね。
教室を出て校舎裏へ。
定番なスポットだ。
お呼び出しに。

「きちんと来たようね」

三人の女子生徒がそこには立っていた。
化粧でかなりケバい。最上級生だ。
そう。私は遂にお呼出をいただいたのだ。



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